魚座時代

ペプラムトップス。
今年の春、初めて知った名称。
服のトップスについた、ウエストの少し上の位置からはじまる、飾りのようなもの。
この飾り、「疑似くびれ」の効果がある。
実はこれ、私には似合わない要素だから、徹底して避けている。
(それを知った経緯は、後日書く予定)
念のため、試着してみて、確かに自分には似合わないと確認済みだ。
このペプラムトップスから、連想したことがある。
唐突だが、2012年から14年間、海王星魚座に移行する。(本当に唐突だ)
占星術方面のプロによると、この移行は、今後、地球上の社会、文化、思想などの潮流にも、影響を与えていくものらしい。
つまり、洋服のデザインの流行も、その影響下に含まれるともいえる。
(今、自分でも、全く自信を持って書けていないと、わかる。汗)
この現象が、ファッションの潮流にも関連しうる、と知ったのは、まず、つねに参考にし、助けてもらっている「誰も教えてくれなかったおしゃれのルール」(Naoko Kobayashiさんのブログ)から。
それから、デザイナーの原研哉の著書「日本のデザイン」でも、鶴見済の著書「脱資本主義宣言」でも、モード、つまりファッションの流行は、シーズンごとに、ほんの一部の人間たち、組織によって、決定され、策略によって生み出されるものであることに言及している。
それらの、モードの決定権を持つ人間には、当然アジアの人間は入っていないと思われる。
洋服は西洋文化の産物。西洋の人間が、その潮流の舵を切るものであるはずだし、その舵を、他文化の人間には、まかせないだろう。
モードの海を制せんとする人たちは、それこそ、壮絶な世界に身を置いていると思う。
どんなところからでも、インスピレーションを得ようとするはずだ。
西洋占星術上の、星の動きをネタにすることも、ありうる。
なんてったって、ほぼ14年に一度の星の変化なんだし。
などと、自分を納得モードに追い込んでいって、「魚座」っぽい文化、ファッションってどんなの?と考えると。
もしも「魚座」→魚っぽいもの、海っぽいもの、水中を連想させるもの、などと連想していくと、今年の春夏服のデザインが、不思議にリンクして、面白く見えてくると気が付いた。
ペプラムトップスも、そのひとつ。
魚のヒレっぽくない?
あまりソフトな素材じゃなくて、やや張りのある素材の、ペプラムトップスの飾り部分。
体のちょうど中央のあたりに、ひらっと付加されるペプラムトップスは、おしゃれな「ヒレ」をつけているよう。
それから、これも今年の春夏ものの流行要素だった、プリーツ。
細かめで直線的なプリーツ。スカートだけではなく、トップスの身ごろ部分にまで、ほどこされた点が新しい、プリーツの効果。
動くたびに、ひらひらとしたプリーツのムーブメントが、0.5秒遅れて起こる。
ふわっ、ひらっ、と動作を減速して、その人の動作を優雅に追いかける。
空中ではなく、水中の動きっぽくない?
空中よりも動きがスローになる、水中の動き。
優雅でひらひらした、緩慢な動き。
水中の浮遊感を、空中で表現するファッション要素が、プリーツなのでは。
街中の日常着で目にすることは、なかったが、ジョルジオ・アルマーニのショーウィンドゥには、きらきらしたうろこを思わせるようなマティエールでつくられた、足先までの長さのタイトめなドレスも見かけた。
まるで人魚のようなドレスだ。
こんな、魚的、水中的要素が入ったデザインの服をまとった女性が、あちこちに歩いていたら、それはまるで、水中をひらひら舞う魚たちのように見えるだろう。
(ちなみに、今春夏に新たに目にした、フィッシュネットのようなプルオーバーも、それを着た女性が、網にひっかかった魚であるかのように、連想したのだった)
たまたま、これらの要素、夏モノとしては自然になじむから、今年の秋冬ものがどうなるかは、わからない。
ファッションの門下漢の私が、そもそも意見を記すことじゃないけど。
でも、もしかして、今年の秋冬のシルエットは、細身でもなく直線的でもなく、コクーンのような、丸みと空気感のあるデザインになるような情報が、海外の雑誌などからは伺える気がする。
たとえばコクーンコート。身体の、真ん中がふくらむデザイン。
コクーンは「繭」のことだけれど、コクーンスカートのような一部分に配されたデザインではなく、ほぼ身体全体を覆うロングコートが、コクーンの形になったら。
それってつまり、魚のような体形じゃない?
また、この秋冬の一流ブランドの新作バッグには、「ドクターズバッグ」があるらしい。
医療道具の入った往診バッグのようなデザインで、口はばちん、とがま口のように大きく開いて、「バッグの身体」の形は、丸みを帯びている。
魚座が「医療」の要素、または「治療」「癒し」をも司る星なのかどうかはわからない。
でも、もしそうだとしたら、ドクターズバッグもまた、魚座的デザインなのかもしれない、と楽しく妄想する。
…妄想していたところ、今月の海外雑誌で見かけた、シャネルの秋冬のイメージ広告には、まるで森の中から這い出てきた「ケモノ」のごとく、鳥の羽や落ち葉のようなマティエールで覆われたファッションが登場していた。
魚からも水中からも、程遠いのであった。
どうなる、魚座時代。いや、ぜんぜん魚座は関係ないはずなんだけれど。