卵1個のオムレツ

料理が苦手である。
なのに、変に食材に、こだわったりする。
豆乳や、発芽玄米をとっていても、別途、お菓子やスイーツを食べているのだから、無意味なこだわりかもしれない、所詮は。
卵は、4個200円くらいの、高めのものを買ったりする。
一食分は1個、と決めているので、50円。
だが、50円で1食分の美味な肉を買おうとしても、ほぼ不可能だと思う。
卵は、50円だせば、とびきりおいしいものが手に入る。
(ちなみに、同じ理由で、豆腐も推奨。98円ではなくて、280円出すと、かなり美味しい。三之助豆腐、大好き)
以前は、卵1個の使い道は、圧倒的にパスタの具だった。
別にカルボナーラじゃなくても、パスタの仕上げに卵を加えれば、とにかく美味しくまとまるのである。
しかし、二ヶ月ほど前、カルボナーラの夕食の直後に、胃腸風邪を引き起こした。
そういう目に遭うと、ゆるいトラウマになってしまい、しばらくパスタが食べられなくなってしまう。
とにかく胃に負担の少ない、シンプルな夕食がとりたくて、土鍋で白米を炊き、ひややっこに、お味噌汁、のり、を用意して。
さて、卵を使ったシンプルなおかずは、と考える。
それってやはり、卵焼きかオムレツだろう。
しかし、卵1個でつくれるものだろうか?
随分前に、お弁当用の、卵1個分の卵焼きが巻ける、ミニサイズのスクエアな卵焼きフライパンを持っていた。
それを使うと、たしかに卵1個で、卵焼きが成形できた。
しかし今はそのフライパン、処分してしまったし。
持っているのは、若干小さめの、フライパン。
これを使って、卵1個で、オムレツもどきをつくることにする。
通常、オムレツといえば、卵1個じゃ成形できない。
1個でオムレツ的な満足感を持たせるには、どうすればいいか。
ふと、思いあたる。小学生の頃から始まる、卵にまつわる思い出を。
当時、我が家では、パンとお菓子作りがブームだった。一過性だったが。
お菓子作りで、重労働だったのが、メレンゲ作りである。
ボウルに入れた白身を、無謀にも、泡立て器で、手動で攪拌し、メレンゲを作りだそうと格闘していた
数年後、電動泡立て器を使ってみて、夢のように簡単にメレンゲができたときは、感動したものだった。
ちなみに、中学生になったときの、家庭科のお菓子の調理実習では、むろん電動泡立て器などあるはずもなく、メレンゲを手動でつくる調理過程が入っている事態に、なんて大変なんだ!と、憂鬱になっていたら、同じ実習グループにいたテニス部所属のクラスメイトが、ご立派なメレンゲをひとりで泡立ててしまった。
さすがテニス部。
あるときは、メレンゲ状態になる前に力つきて、このくらいでもいっか〜と妥協した状態のタネでつくったフィンガービスケットが、オーブンから出てきたら、「フィンガー」状態にはほど遠く、ただの平べったいビスケットになっていたということも。
こうして私は、メレンゲがきちんとしていなければ、ふんわりしない、というメレンゲ効果を、小学生の頃に刷り込まれる。
後日、高校生になったある日、突如メレンゲの思い出がよみがえったのか、母に卵焼きをつくってあげることになったときに、気まぐれで、あらかじめ黄身と白身をわけ、まず白身だけ泡立てて、そのあと黄身をまぜ、焼いてみた。
すると母は、妹がつくった卵焼きより、美味しいんだけど、なんでだろう?? と本気で不思議がっていたのだ。
だ、か、ら。
メレンゲ効果は、お菓子にだけ作用するものではない。
黄身と、白身を、あらかじめわけて、白身だけをできるだけしつこく泡立てて、焼けば、卵1個でも、ふんわり焼きあがるんじゃない?
そう思い当たったのだ。(長くなったけど)
たしか、ふんわりオムレツで有名な、フランスのモンサンミッシェルのオムレツも、卵液をしつこく泡立てるそうだけど、黄身と白身を分けて泡立てているかどうかは不明だ。
ただ、料理上手で有名なタモリが、卵焼きを焼くコツとして、白身と黄身はあまり混ぜない、ふんわりさせる効果を持つのは白身の部分だから、黄身を混ぜ込みすぎるとその効果が落ちる、というようなことを言っていた気がする。
というわけで、その方法で卵液をつくってみた。
だしやスープではなく、塩と、豆乳を少し加えて、フライパンにじゅわっと流し込む。
丸底に広がった卵液が、ふつふつと泡だつ。なんとなく、ふんわり感があるような、気がする。
フライパンの中で、生地をかきよせて成形するのはやめて、ぱふっとパニーニのように、二つ折にしてみた。
うん、だいじょうぶ。二つ折でも、見た目にある程度のボリュームがある。
皿にのせて、食する。
うん、ふんわりした口応え。贔屓目(贔屓舌、というべきか)入っているかもしれないけど。
卵1個のオムレツ、つくる方法を見つけた。
お好みで、生地をぱふっと二つ折にする前に、具を加えることもできるだろう。
私は、バジルペーストをいれちゃったりしている。
長すぎる料理のレシピ、すみません。