岡田斗司夫FREEex「オタクの息子に悩んでます」 を読む〜その3〜

「その2」からのつづき。
通りすがりの女性にブスと言う男性の側の、立場になって考えてみる。
ブスと言われて悩んでいる側の私にとっては、思いがけないスタンスの思考方法だ。
だけど、男性は男性なりに、いつどこで、ブスとすれ違うかもしれない状況に身をさらされていることが苦痛、という悩みの主であると仮定してみる。
とりあえず、共感も愛もない回答は「その2」でつくってみた。
ここからは、共感と愛を加えて、悩みを分析してみる。
・・・・・できるのか、そんなこと?
汝の敵を愛せ、ってこういうことか。
思考のアレンジ:思い切り回り道をして心の深部まで考察する
分析にあたって、回り道をしてみる。
うろ覚えなんだけど、随分前、NHKで、マクロ・ミクロの世界にせまるカメラ技術の成果を紹介する番組で、ミクロのレベルの技術の例として、特殊なカメラで、人間の受精に関わるシーンをとらえた映像を見たことがあった。
何億もの精子が、浜辺にうちよせる波のようにいっせいに放出される映像。
その億単位の精子のひとつひとつが、子宮でじっと待っている、たったひとつの卵子(通常、卵子は、約28日間かけて、やっと1個だけ子宮に送り出される)を目指して、壮絶なレースを繰り広げる映像。
ひとつしかない卵子と出会える精子は、たったひとつだけ。しかも早いもの勝ちだ。
卵子を目指して走り泳ぐような形状の、精子たちの、抜きつ抜かれつのレースの映像。
卵子精子の受精の瞬間の映像は、さすがになかったと思う。
でも「精子目線」「精子の主観ショット」みたいな感じで、「(たぶん)卵管の内部を進む」カメラの映像があった。
みごと1着になった、たったひとつの精子が、進んだ果てに待つ卵子に、近づいていく、その目線と景色って感じ。
卵管の内部は、すごくきれいな薔薇色で、ふわふわのトンネルみたいだった。
壮絶なレースを勝ちぬいて、このきれいな薔薇色ふわふわ廊下をたったひとり(?)、卵子に会いに進んでいく精子って、まるで玉座に向かうような、うっとりした気分だったんじゃないだろうか、と思った。
余談。このきれいさが強烈だったので、私は後日、短歌までつくったのだった。
ぽむぽぽむ うすくれないのロード行く 夢見ごこちの 精子一着
余談でした。
これらの映像の感想は、この短歌が詠めた、というだけではなくて。
男の世界って、精子のレベルから、競争しているんだなあ、としみじみ思ったのだ。
・・・などと、思考の回り道をしてみた。
回り道をしたら、気がついたことがある。
精子(男)が他の精子(男)を打ち負かすのならともかく、卵子(女)にダメージを与えるメリットが、どこにあるのか?
通りすがりの女に「ブス」と伝えることは、まちがいなく、その女に心傷を与える行為だ。
自分はこの女から「不快感」というダメージを与えられたのだから、同様に「不快感」というダメージを返した、報復行為なのか?
いや、男にとっては、どんな女よりも、自分以外のすべての男のほうが、もっと不快な存在でしょ、生物学的に考えれば。
なのに、男は、男とすれちがったときに「お前が不快だ!」とは言わない。
それって、即、喧嘩を売るということだ。それだけの覚悟がいる。
身体的な喧嘩に発展するということは、自分の身を危険にさらすことを意味する。
だが、女なら、身体的な喧嘩に発展する可能性は、ほとんどない。自分の身は安全な状態に守りつつ、女には心傷を与えることができる。
でも、そうやって、女に心傷を与えるメリットは?
自分がブスと言った女に、どのような作用を、結果を期待するのだろうか?
・・・・・・言われた女は、女としての自信をそがれる。失う。それは私が当事者だからすっごくよくわかる。
その結果、ある女には、悔しいいい、と、何とかして、あがいて、自己改善にとりくむ効果をもたらす。
またある女には、女として市場に参戦すること自体を、あきらめる効果をもたらすのかもしれない。
「市場への参戦をあきらめた女」は、誰に対してメリットと、デメリットをもたらすか。
デメリットを与えるのは、その女を獲得できたかもしれない男だ。
その精子が出会えたはずの、卵子が、会うまえに待ち合わせの場所から立ち去ってしまうようなもの。
メリットを得るのは、もともとその卵子を獲得できない他の精子(男)、すべてだ。
他の男が得ることができたはずの利益を、阻害することができたのだから。
通りすがりの女に、ブスと言う行為。
その行為は、自分に何かのメリットを与え、女に、ダメージを与えることができるから、する。
でも、本当に、ダメージを与えたい相手は、実は女ではなくて、男なのではないだろうか??
それはあくまでも、無意識の、心の深層から出た行為として。
・・・・・ここまで考えてきたら、また、別の回り道が思い浮かんだ。
岡田斗司夫が記すとおり、回り道をすると、思考がひろがっていく気がする。
→このつづきは、「その4」で。