トレンチコートを着てもいい?

トレンチコートは、似合わない。
そう思っていたため、トレンチは私が着ないアイテムのひとつ、とあきらめていた。
トレンチの代表的な色、ベージュも、パーソナルカラーが冬の私にとってはNGカラーだし、コートやジャケットのアウターはダブルよりもシングル、大きな襟も避ける、というグレースタイプの推奨ルールにも反するし。
かつて、お店でトレンチコートを試着してみたとき、店員さんが「・・・・・・」と沈黙してしまい、代わりに勧められたのが、ステンカラーのシングルのコートだったことがある。
ステンカラーのコートは、トレンチコートから派生したもの、だそうなので、私のように、トレンチコートが似合わない人々のために、生まれたデザインなのかもしれない。
とても勉強になるNaoko Kobayashiさんのブログ「誰も教えてくれなかったおしゃれのルール」の、トレンチコートがテーマにとりあげられた記事では、映画「シャレード」のオードリー・ヘプバーンのトレンチコートに言及していた。
それによると、トレンチコートは、大変パーツが多いのが特徴で、(肩章とか、ベンチレーション、前肩当て布、ベルト、フラップポケット、袖口のストラップ、後ろのセンターベンツなど)オードリーが来ているジパンシイデザインのトレンチコートは、それらのパーツがかなり少なくされたデザインだということ。
そういえばパーソナルデザインで、一緒に診断を受けたキュート・ボーイッシュの人は、肩章がある服を勧められていたけど、私は逆に、できるだけ不要なパーツがない服を選ぶようにと言われたっけ。
オードリーがグレースタイプだとしたら、自分に似合うものを見抜いている点で、本当に天才的だよなあ。
しかし、買ってしまったのだよ。
二週間前に。
久しぶりの衝動買いと言ってもいい。
何かを買おうといった目的もなく、無印良品の店内をぶらぶらしていて。
ふと、目に入ったネイビーのトレンチコートが、気になった。
なんだかとても、気になった。
トレンチだけど、肩章はあるけれど、でも。
試着してみようかな。
身体を通し始めたとき、唐突に、私はトレンチコートをどう着るべきか、に気がついた。
トレンチコートの特徴のひとつ、ぎざぎざの大きな襟は、立ててしまって前肩当て布の下のボタンにきちっととめてしまう。
そうすると、ダブルだけれど、襟のかたちはステンカラーとほぼ同じになる。
ファッション雑誌で何度か目にしたことのある、「人気スタイリストによるトレンチコート着こなし術」といった記事では、とにかくどこか着崩すのがおしゃれ、という雰囲気だった。
ボタンを全部はずして、ベルトだけを結ぶとか、ボリュームたっぷりのストールと合わせるとか。
でも、私の場合は、トレンチコートのボタンは全部、きっちりとめる。
たまたまそのとき着ていた、ボタンダウンのシャツの襟にコートの襟を重ねると、きっちりモードが襟元に盛られて、より良い感じ。
校則どおりに着る制服の如くかっちりした着方だけど、ここまできっちり着ないと、似合わない。
肩章はついているけれど、あまり目立たないから気にならない。
加えて、ダブルを強調する作用をする二列のボタンも、布地と同色のネイビーなので、ほとんど目立たなかった。
このトレンチコート、こういう着方をすれば、私にも、だいじょうぶ。
お値段も無印良品だけあってお手ごろ(ほぼ1万円)だったこともあり、もうこれは買いでしょう、と購入。
購入後、タグをはずそうとしたときに、商品説明文が目に入ってきて、それには「はりのある生地の上品なトレンチコートです」とあった。
「はりのある生地」「上品」は、まさに、パーソナルデザインでアドバイスされたグレースタイプの服のキーワードだ。
私も、馬鹿みたいにしつこくグレースタイプの服について、あれこれ考えていたおかげか、知覚が働くようになってきたのかなあ、と自賛する。
ふと、私が秋用のトレンチコートが欲しくなったのは、今年のコートのシルエットには、手が出せないと判断したせいもあるかも、と思い当たった。
以前別記事「魚座時代」で書いたけれど、今年のコートのシルエット、「魚」っぽくなっているのですよ。
なで肩で、中央部分が丸く膨らんだシルエット。コクーン型かもしれないけど、魚っぽくもあるでしょ?中央にボリュームがあるシルエットって。
加えてオーバーサイズなシルエットも、今年のコートの特徴。
グレースタイプは絶対、手をだしちゃいけないシルエットなのだ。
私、今年は(もしもこの傾向が数年続くのなら、数シーズンは)コートを買ってはいけない
しかし、どんなに今年の流行が、丸みがあって、オーバーサイズで、コクーンっぽいシルエットであったとしても、さすがにトレンチコートは、ストレートのシルエットから、遠ざかりにくいと思う。
そう、シルエットという点からいけば、トレンチコートはグレースタイプの私にはOKなはず。
だから、シルエットの恩恵を最大限に受け、パーツをなるべくかき消す着方をすれば、いいってことになる。
ここ数日、ぐっと秋めいた気候になってきたので、さっそくトレンチコートを着用。
ダブルだと前身頃部分の布地が二枚になるから、シングルよりも暖かい〜秋にはトレンチだ〜とご機嫌である。
しかし、自分で決めたトレンチの着方を死守する私は、さっと羽織って歩き出すことができず、襟をたててボタンを全部とめて・・・と着込む作業をしなければならない。
そのときは、一瞬、トレンチをさっと羽織ったり、着崩したりが似合う、他のタイプの人々がちょっとだけうらやましかったりする。