北川智子「世界基準で夢をかなえる私の勉強法」感想

タイトルの本を読んだとき。
著者のサクセスに対してではなく、この人の勉強の仕方って、面白いっ、とときめいた。
例えば、英語のテストで高得点をとろう!と目標にした場合に、対策問題集に手を出すのとは、まったく違う方法を彼女はとる。
カナダのホームステイ先での、こどもへの絵本の読み聞かせ、こども向けテレビ番組の鑑賞、単語カードをトランプのように並べた記憶法、地元のコミュニティで行われるアイスホッケーに毎週参加し、試合の中で状況の推測による英語の理解力を磨く、などなど。
対策問題集を手にとるのが、無駄のない、最短距離をとろうとする方法だとすれば、北川智子の方法は、回り道。
北川智子が、カナダの大学で数学を専攻したとき、数学は解を導くことができなくても、そこに行き着く過程の考え方や発想が評価されるもので、彼女はその発想がユニークなため、担当教授から高評価されたとのことだ。
たぶん最短距離で無駄なく考えるより、回り道をしながらの豊かな考え方を見せられるほうが、第三者の立場にしてみると、面白いのかもしれない。
回り道な勉強法は、道のりが長く、範囲が広がるぶん、道中で得るものは多く、その旅の道中のお話も、最短距離の旅話を聞くよりも、きっと面白い。
北川智子の専門分野のテーマの設定の仕方、取り組み方、学生への授業の方法の、基底にあるものは、「つなげる」編集法だと思う。
「つなげる」ためには、まず「点」をつくらなければならない。
自分の脳内に、いつか線になる、点を、いくつも置いていく感じ。
点が多ければ多いほど、点が置かれる範囲が広ければ広いほど、線は多く生まれ、豊かになる。
北川智子がハーバードのカレッジフェローになってからの、学習スタイルはますます面白くて、週に二回は、朝フィギュアスケートを習い、ほぼ毎日、講義が終わった後、夕方に二時間趣味のピアノを弾き、そのあと日付が変わるまで、リーディングとライティングをする、というもの。
この、ピアノを二時間弾く行為は、最短距離をとろうとしたとき、まったく無駄な行為に見えるかもしれない。
リーディングとライティングの時間が二時間、削られてしまうようなものでは?と。
たぶん、ピアノを弾くときは、日々のその他の行為とは、脳の別の筋肉を鍛えていることになって、それが脳全体の働きの好循環につながるってことなのかも。
北川智子は、無意識にそれを知っているのかも。
脳内のさまざまなフィールドの筋トレを、怠らないような感じだ。
アインシュタインも、ピアノを弾きながら、発想を練っていたというし、モーツァルトは奥さんと世間話的会話をしながら作曲をしたというし、一見、何の関係もない行為が、別の行為とつながって、思わぬ線を生み出すのかもしれない。
というわけで、北川智子のこの著書を読んで以来、このダイアリーの記事を書く回数を増やしてみようと、試み中。
仕事は劇的に多忙な時期なんだけど。
なぜか、だからこそ、書いたほうがいいような気がしたのだ。
偏った使い方をしているままではなくて、脳の別な部分を使ってあげたほうがいいように思えて。
それが私の、この本の読後の最大効果なのである。