雑誌:DRESS 私的メモ

経営陣に秋元康見城徹藤田晋、編集長に山本由樹、という中高年男性の方々が創刊した、新雑誌DRESSを、拝見。
雑誌の編集長の目線は、雑誌の内容そのものの目線をつくるものなのか。
劇場の舞台の上で、華やかな、ときに奇妙に着飾る女たち、それを客席で、鑑賞する男性たち、というシーンが見えるようなつくりだなあ、と思った。
上品ぶらず、師匠風も吹かさず、ときに滑稽に映っても、読者を楽しませよう、というエンターテイナーの精神に溢れた内容でもあると思う。
DRESSという雑誌名だけあって、登場する服はオケイジョン向けの、ワンピースが多い。いわば非日常的なドレス。
それを四十代女性に、日常着として、またはオフィスで、着ようという提案。
ノースリーブのミニ丈ワンピが圧倒的に多いんだけど。
おとなしい日常さえも、非日常的な枠にとりこむパワーを持つ女性であるべき、という提案なのかもしれない。
もちろん、ドレスを披露しているのはプロのモデルがほとんど。
でも、そうではない方々も、ドレス姿を披露。
この雑誌のファッション・ディレクターを務める、大草直子は、約65万円のボッテガ・ヴェネタのドレスを、椅子に座った姿勢で披露。
そのドレスの全貌は、別撮りのトルソーに着せた写真で披露。
洋服は、立ち姿でこそ映える服。しかし、大草直子のドレス姿は、立ち姿ではなく座り姿。
高価なドレスを着た「女のための女の内閣」の面々の女性たちも、小島慶子ひとりが立ち姿、他の8名は全員座り姿。
せっかくのドレス、立ち姿で見せてあげればいいのに、それをしないのは、たぶんドレスに負けてしまうからではないだろうか。
美しいドレスを、これでもかこれでもかと見せられても、私など、このドレスに自分の身体を通して、自分の顔をのっけたら、そのときに引き立て役になるのは、ドレスじゃなくて、自分のほうだと確信する。
「立ち姿」という、洋服が最も美しくなる状態では、人間が負ける。洋服の美しさに。
洋服が美しければ美しいほど、自分の負け率は高まる。
せめて「座り姿」で洋服の美をマイナスして。
そのくらいのハンディをもらえば、モデルではない人間は、ドレスになんとか負けないことができる。
この雑誌は、ドレスが主役? 女性が主役?
タイトルが、はっきりと物語っている。
非日常的なドレスを、もっと売りたいし、買ってほしいんだよね。
ビジネスなんだもの。

雑誌の主役はドレスだ。ドレスのための雑誌。