香水禁止

香水の類からは、ここ数年、遠ざかっている。
一時期、定番や新製品のオードパルファムを、あれこれと試していたことがあった。
あるとき「結局いつも、似たような香りを選んでいるね」と友人に指摘されて、はっとなる。
違うものを選んでいたつもりが、結局同じものを選んでいたに等しい。
それを機に、香水遍歴は終わらせた。
使う香りは、アクアディジオだけと決めた。
その後、風邪をひいている人が、社内で私に話しかけようとそばに来たとき、激しく咳き込んでしまったことがあって、香りが風邪の最中の咽喉に刺激を与えてしまったんだ、と反省。
それ以来、何もつけないようになった。
もともと、香水類の液体は、直接肌にかかると、とたんに肌が荒れてしまうような、刺激の強さだったし。
室内にしろ屋外にしろ、その場のにおいに悩まされるという状態に遭遇したときは、ニールズヤードレメディーズの、直接肌に塗布できるスティック状のボトルに入ったアロマオイルを手首に塗った。
今年の正月休みに、妹から、昨年度のヒット商品なんだって、と、「ナリン ハーブオイル33+7」を貰う。
これも、肌に直接塗布できるのが便利で、バスオイルとしても使える。
香りは、柑橘系が主役の、爽やかリフレッシュ系な感じで、愛用中。
しかし、街中で、趣向を凝らした香りをふわっと残していく女性にすれ違ったときは、やはり羨ましかったり。
先週末に見かけた雑誌「VANITY FAIR」の表紙はオードリー・ヘップバーン
さっそくオードリーの記事を読んでみると、オードリーとローマをテーマに、息子のルカが語った内容や、ルカが所蔵する当時のファッション写真などで構成されていた。
いくつか参考になるセンテンスがあったが、今日はそのうちの、ひとつだけ。
かつてジバンシイは、オードリーのために香水をつくった。
その香水の名前はランテルディ。フランス語で「禁止」という意味。
オードリー以外の女性が使用することは禁止、という意味あいも含んだネーミングだったか。
(当然、オードリー以外の多くの女性が使用したがるという効果を生む、作為たっぷりのネーミングだ)
自分にささげられた香水まで存在したにも関わらず、オードリー自身がふだん好んだ香りは。
「just one drop of bath oil in the water」一滴のバスオイルだった、とのこと。
幼い頃、田舎で育ったオードリーは、都会よりも田舎で暮らすことを好み、ローマからスイスに居を移したのも、そのためだったという。
香りに対しても、スタイルがあったってことだなあ。
このままアロマオイル系だけのスタイルを、私も続けてみよう、と勇気付けられる情報。
ちなみに、気がつかずに使っていたけれど、「ナリン ハーブオイル33+7」の原産国は、スイスだったのも、嬉しい気づきだった。
とはいえ、香りに関しては、二年前に遭遇した一団の記憶もある。
新橋駅で、改札口を通ったとたん、とてもいい香りが流れてきた。
たっぷりな量の、さまざまなオードパルファムが、ぜんぶ合わさって、芳香を醸し出している状態。
その香りの方向を見ると、そこにはご老人の集団が。
聞こえてきたのは、どうやらフランス語。
フランス人のご老人の、ツーリスト団体のようだった。
そういえば、フランスに旅行した友人が、スーパーマーケットに、日用必需品の感覚で、香水が売られていた、と言ってたっけ。
フランスは、ご老人になっても、香水が日用品、ってことか。
旅先でも、たっぷりの「自分の香水」をつけることをかかさないご老人も、それはそれでスタイルがあって、いいなあ。
着るものも、香りも、「自分の好み」が指し示す選択からぶれないことがスタイルなのかもしれない。