シェアハウスっぽい経験

最近、テレビよりもラジオをつけている。
ふと耳が惹かれたのが、希望者が殺到しているシェアハウスがある、というニュース。
正確には、シェアハウス型マンション、という感じのようだ。
住人同士で、つながりを生むしかけが施された、共用スペースがあるのが魅力らしい。
その共用スペースで、住人同士の自主的な食事会・飲み会や、趣味の会合を行うこともできるとのこと。
家賃は相場よりも高いが、「つながる可能性の魅力」があるから、高くはない、という住人のコメントが挿入。
シェアハウス。
私の学生時代の住居は、三階建ての一戸建てに住む大家さんが、娘が嫁いで開いたスペース(3F部分丸ごと)を、女子学生5人に貸し出す、という形態のものだった。
入り口・キッチン・風呂・トイレ・洗濯機が共用で、薄い壁や襖で仕切られた6畳弱の5部屋の個室が、各住人の専用スペース。
だから、シェアハウスっぽいといえばそうかも。
今、その住居を振り返ってみて思う。
学生だったから、若かったから、できた。
今は無理だ。
共用生活を、波風立てず送るコツは、たったひとつ。
共用部分の基本的なマナーを守ることだ。
そのマナーって何かというと、掃除だ。
特に当番を決めることもなく、共用部分の掃除の取り決めは、ゆるかった。
大家さんは、5人それぞれ、週に1回、してね、って感じだった。
それなら、週に5回掃除がされることになる。
共用部分に置いてあるごみ箱のごみ出しも、当番は決めないけれど、毎週、決まった曜日に出しにいってね、という程度。
ところが。
たとえ女子であっても、いや、女子であるからこそなのか、みんな、自室内の掃除はしても、共用部分の掃除となると、呆然とするほど、やらない。
気がつくと、私ひとりだけが、週に一度、掃除をし、週に二回のごみだしをしていた。
同居人どうし、キッチンにおいてあるテーブルで、ときおり楽しく談笑する間柄ではあったので、この雰囲気を悪くするのもなあ、と掃除&ごみ出し問題を追求することはしなかった。
掃除以外に関して、私だって長電話による騒音を発するなど、マナーに反した行為は重ねていたし。
大学を卒業し就職と同時に、5人のうち私が一番先に、女子学生限定のその住居を去ることになった。
(5人のうち、2人は、私より一年前に社会人になっていたのだが、学生限定の家賃の安さが魅力で、大家さんに交渉し、居住を延長してもらっていた。)
去り際に「この家、○○さんがいなくなったら荒れ果てるね〜」と、同居人のひとりが私に言った。
自宅の一部を貸し出している大家さんは、この件に気をもんでいたようすだったので、私が退去した後、当番制にするとか、なんらかの策をとったのかもしれない。
共用部分の掃除とごみ出しを、私ひとりだけはしていた、その点だけで、大家さんの私に対する印象は、他の4人より高いようすだった。
私は確信する。
共用部分の掃除やごみ出し、つまり共用部分の汚れ仕事。
これをするかどうかだけで、共用住宅内の、その人の印象も、人間関係もよくなると思う。
たぶん、現在「シェアハウス」とネーミングされている住居は、共用部分の掃除当番が設定されているはず。
その当番を死守すること。とても基本的なマナーだけど。
しかし、その基本的なマナーを守り続けることが、どれだけ大変か。
あるいは、ニュースで聞いた人気のシェアハウス型マンションは、共用スペースの掃除は、住人当番ではなく、別途管理が入っているのかな。
それならば、相場より家賃が高い理由がわかるけれど。