クラッチバッグの使い心地

クラッチバッグは、グレースタイプに似合うバッグなんだそうだ。
理由はわかる。
スクエアな形で、装飾を極限までそぎ落とした、シンプルな形だもの。
二、三年前から、市場にクラッチバッグが目立ち始め、今年は最多な品数に達しているようすである。
クラッチバッグの選択肢が豊富な時期に、ひとつ手に入れて使ってみよう、と思った。
ドレスアップしたときに持つようなミニクラッチは、使う機会がほぼないと思われるため、普段使いできそうな、ビッグクラッチにしようと決める。
色々物色したあげく、結局、トートバッグの選択と同じく、ロンシャンで、ブルーのビッグクラッチを購入したのが春のこと。
さて、使ってみようと思ったが、マチが通常のバッグより薄いので、基本外の荷物がある日は、使えない。
たぶん私、女性としては基本の荷物が少ないほうだと思うが、その私でも基本アイテムを入れてぎりぎりである。
もしかして、たいていの女性は、基本の荷物が納まらないんじゃないだろうか。
通勤にはちょっと・・・無理だ。
休日に使ってみる。
ま、たしかに、クラッチバッグを持って歩く姿は、普通のバッグより、垢抜けた感じにはなるかも、と自己満足に浸る。
歩き始めると、持ち方も普通のバッグと事情が違う、と気がつく。
普通のバッグでも、左右で持ち替えたり、腕の関節部分にひっかけたり、肩掛け可能なら肩掛けにしたり、持ち手を手で握ったりと、移動中に持ち方は変化していく。
同じ持ち方をしていると、身体が疲れるからで。
クラッチバッグの場合、まず持ち手がない。
ちょうど、ノートパソコンを持ち歩くのと似たような感じになる。
持ち方としては、書類ケースを持つみたいに、腕と手で抱える。
あるいは、脇に、がしっとはさむ。
あるいは、四つの角のうちひとつの角をひっつかんで、斜めにぶらさげる。
慣れていないせいか、どの持ち方も、いまひとつ落ち着かない。
加えて、うっかり道中で買い物などしてしまうと、荷物二個持ち状態になるため、よけいクラッチバッグが持ちにくくなる。
ということは、道中に荷物が増える可能性のない時じゃないと使いにくい。
そうなると、使用頻度がさらに下がる。
クラッチバッグで無事に過ごせた機会は、少ない。
休日に、友人とのランチに出かけたとき。
夕方からの予約のマッサージに、自宅から出発して、直帰したとき。
自宅から美容院に行って、買い物をいっさいせず帰宅したとき。
その他は、うっかり荷物が増えてしまった〜クラッチバッグ持ちにくい〜という状況となった。
思えば、車で移動できる人なら、ずいぶん使用機会は増えるんだろうな。
車で目的場所につけて、クラッチバッグだけ手にして食事だの、観劇だの・・・。
え? でもそういう折はドレスアップしている場合もあるから、小さなクラッチバッグのほうがいい。
ビッグクラッチは、角をひっつかむ以外の持ち方をしたら、腕の内側の肌や、服の布地にしっかり触れたりするので、そのあたりも気になる。
つくづく、ビッグクラッチって、女性向きではないのかもしれない。
ふだん手ぶらで歩くくらい手荷物がない男性が、今日はポケットに収まらないくらい荷物があるかな、っていうときにはちょうどいいと思うけど。
男の人の服装は、丸みのあるデザインのバッグよりスクエアなバッグのほうが似合うだろうから、その点でもビッグクラッチはなじむはず。
さて、春に見かけたファッション雑誌上での、ビッグクラッチの頻出度は凄かった。
しかし、私、今もって、街中でビッグクラッチを持った女性を目にしたことがない。
表参道でも六本木でも新宿でも銀座でも、出会ったことがない。
やはり、容量的に、女性には足りないんじゃないかな。
ビッグクラッチは、日本女性の未所持率が高いんだろう。
だからこそ、流行モノとして売り出せば売れる、と市場は期待したのかも。
パーティ文化が根付いた欧米なら、ドレスの色やデザインに合わせて、ミニクラッチのデザインも変えるはずだから、まだ市場はあると思うけど、日本の女性には、ミニクラッチを売るのでさえ、難しいんじゃないだろうか。
来年、日本の売り場からは、ビッグクラッチは消える気がしてならない。
売れなければ、売り場に置くはずはないから。
私は今もまだ、自分のクラッチバッグの使いこなしに四苦八苦中である。
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追記。
今朝、6月29日の朝、駅のホームで、初めて、ビッグクラッチバッグを手にした女性をひとり、見かけた。