三着のマキシ その3

つづきを書くのが遅くなってしまった。
三着目のマキシを実際に着てみてから、書こうと思ったせいである。
本日、着た。
着るまでに、準備を要したマキシだった。
三着目のマキシ。
黒のクロシェニットのマキシワンピース。
私にとっては冒険アイテムだった。
ノースリーブで、胸開きも背中開きも広めな開きぐあいで、ニットなので身体のラインがほぼ浮かび上がる。
ハイゲージではなくクロシェニットのため、直に着たら凄いことになるから、付属のインナーを着る。
これが、黒のストレッチ素材の、タンクトップをちょっと長めにしたようなインナー。
胴長の私にはお尻がぎりぎり隠れる、という丈で、普通の人が着ても、かなりのミニ丈インナーだ。
このインナーの上にクロシェニットワンピを着ると、ニット越しに、ふとももから足首まで、脚の8割くらいが透けて見える仕組みとなる。
私が着たら、8割どころか9割5分である。
いくらニットが上にあるとはいえ、まずい。
イメージコンサルティングの先生は、このワンピを着るときは、別途、長めのインナーを合わせるようアドバイスがあった。当然だね。
「この服は、背が高い人しか似合わないんですよ」と先生の言葉。
付属のインナーは、背が高い人が着たら短すぎる丈なんだけど、単に私が胴長なだけか。
しかし、私にはあまりに大胆な冒険アイテムだと思ったため、お買い物同行当日は、その服は買わなかった。
だからブログの記事も「三着のマキシ」ではなく「二着のマキシ」になるはずだった。
しかし、帰宅後も気になって仕方がない。
私がクロシェニットワンピに躊躇したのは、「未知の服」だったからだ。
経験したことがない服。
でもイメージコンサルティングの先生が選んだということは、私に似合う服だからのはず。
私の迷いにピリオドを打ったのは、オードリー・ヘプバーンだった。
サム・ワッソンの著書「オードリー・ヘプバーンティファニーで朝食を」を読んでいたとき。
ふと、映画「ティファニーで朝食を」でオードリーが冒頭で着たジパンシイの黒のドレスの映像が、頭の中に瞬いた。
ノースリーブで、身体のラインに沿った、黒の細身のドレス。
ジパンシイのドレスと比較しようとすること自体、おかしいかもしれないが、クロシェニットのマキシワンピは、この黒いドレスにシルエットが似ている気がする。
そう気づいたとき、迷いが消えた。
着てみたい、あのマキシ。
お買い物同行の日から一週間後、私は再度、丸井のデュラスアンビエントに足を運んだのだった。
試着室で、買う前に再度試着してみる。
胸周りと背中周りのカバーに、黒の夏用ストールを合わせてみよう、と思う。
ボレロやカーディガンだと、このマキシワンピのシルエットが崩れる。
ワンピを買い、そのまま丸井でストール探し。
色とりどりの夏用ストールがバーゲンになっていたが、黒となると、二点しかなかった。
どちらも、UV加工、ウォッシャブル、セール価格で1500円程度と、お買い得だ。
違いは、素材。レーヨン素材と綿素材。
レーヨンのほうが発色が良く光沢があったが、肌触りの良さから綿素材のほうを購入。
帰宅後、インナーに加える、黒のスリップスカートは、ネットショップで見つけて購入。
このマキシワンピの大胆さと無防備さの、緩和アイテムであり、防御アイテムである。
準備はできた。
いざ、着てみる。
着てみると。
なんだかヒップ周りに不安感がある。
ラインがはっきり出る上に、クロシェニットゆえの隙間もあるし。
生地の厚い下着を合わせたほうが安心だな、と判断して、黒のフィットネスウォーカーにする。
ガードル嫌いなので、ガードル的なものが必要となったときは、ワコールのフィットネスウォーカー頼みなのである。
クロシェニットがひっかかる危険を避けるため、バッグは、スパンコールや金具が表面にないものにする。
アクセサリーもつけず、念のため腕時計もはずすことにした。
いざ、歩き出すと。
思っていたより歩幅が取れない。
裾幅が狭いせいだなあ、と思いながら、小股で歩く。
この歩幅の狭さ、もしかして着物なみではないだろうか。
しかもクロシェニットが傷ついたら、という不安感で、座るとき、立ち上がるとき、階段の上り下りなど、一挙一動が慎重になる。
ストールとインナーのスリップスカートがなければ、かなり大胆なデザインのワンピのはずだが、立ち居振る舞いは、妙にしとやかになる。
ふむふむ、面白い。
一見、グレースタイプっぽくない大胆なデザインの服だが、要求される立ち居振る舞いは明らかにグレースタイプっぽいではないか。
するりと着れた一着目、二着目のマキシとは違い、着るまでに試行錯誤が必要だった三着目のマキシは、着てからも発見があったのだった。
服は実際に着てみないとわかんないなあ。
夏の街中は、マキシ飽和状態であるが、マキシって、年齢も体型も限定しない、どんな人にも似合うアイテムのような気がする。
うーん、なんでだろう?
マキシに似た服って、何かあったっけ?と考えると。
袴。
マキシって、和服でいう「袴」的なアイテムじゃない?と思う。
特にあの、丈感。地面すれすれか、ときには地面にひきずるくらいのオーバー丈、マキシと重なる。
袴が誰にでも似合うってことは、マキシもきっとそうである。
マキシは、現代の袴なのだ。
流行遅れのアイテムになることなく、定番アイテムとなってほしいと願う。