着付け体験レッスン

花嫁になる予定がかけらもないのに注文した「花嫁セット」が自宅に届く。
持参するものはそろったので、「衣装らくや」の「初めての着付け体験レッスン」を予約した。
さて、レッスンの日。
平日の夜に予約をしたので、会社帰りに人形町へ直行である。
思えば、社会人になってから、呉服屋に入るのって初めてである。
緊張しながら入ると、「いらっしゃいませ〜」と愛想の良い声に迎えられる。
「衣装らくや」は、思いがけずこじんまりした店構えだった。
しかし、呉服屋さんって、広い店舗スペースは必要ではないのかも、と後日思う。
洋服はさまざまなデザインの完成形を売るので、設置スペースやディスプレイが必要だが、きものは、デザインは統一されていて、リサイクルショップじゃなければ、完成形ではなく、まず布の状態で販売する。
あの、巨大な海苔巻きのような反物の収納は、積み重ねもできそうだから、洋服ほどには場所をとらないはずだ。
2Fに案内され、事務所スペースで受講手続きをしていると、身長をきかれる。
これは、丈の問題で、レッスンで私にどの着物を用意するかを決めるためらしい。
後に、私は身長に関わるきもの問題に遭遇することになるのだが、このときはまだ知る由もなく。
続いて、今日のレッスンを担当する先生を紹介される。
お顔立ちも身体のフォルムも、まろやかなたたずまいの先生である。
ひらがなみたいな優しいフォルムである。
(私は十年ほど前に、短歌づくりを試みたことがあって、半年ほどの悪戦苦闘のあげく、私には詩歌を詠む才能はない、とあきらめたのだが、そのとき詠んだ短歌に
「ひらがなの国に生まれし嫗らの まろき背中に墨にじみたり」
というものがあって、先生を見たら突如その自作短歌を思い出したのだった。)
先生のやわらかな雰囲気と、お召しになっている、すかし模様の入った黒い着物の素敵さに、見とれる。
きもののことがさっぱりわからない私にも、これ、いいきものなんだろうなあ、と思わせる。
実はこのきもの、私が購入した本「着物がもっと楽しめる 石田節子の着まわしと着付けの鉄則」内に、数回登場しているとのこと。
帰宅後チェックすると、それは麻のきもの「小千谷縮(おじやちぢみ)」であった。
その日は、もうひとり受講者がいて、ふたりの受講者に対し、先生ひとりがついてくれる。
レッスン場所の和室に移動して、ついたての向こうで、下着の上に肌襦袢と足袋と裾よけだけの格好に着替える。
着方がわからなくても、あとで先生が直してくれるので、適当に着ていい、とのこと。
上着のように肌襦袢を羽織り、裾よけは巻きスカートのように着てみる。
ついたての陰から出て、先生に直してもらい、さて、レッスン開始である。
・・・・・・・
レッスン終了。たしかに、たっぷり2時間かかった。
衣服を着るのに2時間かかるもんなのね。ふー。
でも、自分の中で、きものを着たいかどうかという意思確認ができた。
きもの、着よう。
この2時間のレッスンで体験したことは、今後の記事で、断片的に引用していくと思う。
6月の最終週の木曜日のことであった。