着物ビギナーズレッスン

6月の最終週、衣装らくやで、初めての着付け体験レッスンを受講した翌日の夜。
今度は、大丸東京の「着物屋くるり」で、525円の着物ビギナーズレッスンに参加する。
着物屋くるりを知ったのは、雑誌「七緒」に入っていた広告で、四万円程度の着物の広告が掲載されていたのを目にし、ふうん、手が届く価格で着物をつくっているお店なんだ、と興味がわいて、ウェブでチェックしたところ、ビギナーズレッスンの紹介と日程が告知されていたのである。
会社帰りにちょうどいい時間帯のレッスンは月に一度だけで、衣装らくやの着付け体験レッスンの翌日の夜が開催日。
それを逃したら次のレッスン開催日は一ヶ月先だ。
連日連夜になるが、行ってしまおう、と申し込んだのだった。
ウェブでは、くるりオリジナルのデニム着物も紹介されていた。
こちらにも興味が沸いたので、着物屋くるり著「デニム着物の本」も購入して、読んだ。
くるりの定番のデニム着物は、ブラック、チャコール、ブルーの三色があるらしい。
私のパーソナルカラーは冬だから、チャコールはNGとして、ブラックかブルーなら似合うかなあ、と想像。
レッスンを受けにいくついでに、実物も見てこよう、と思う。
さてレッスンの日。
大丸東京のくるり店内の和室スペースで、私ともうひとりの受講者、2名で、着物の基本の講義を1時間ほど受ける。
くるりの店員が、配布された10頁ほどの資料をもとに、着物の基本を講義してくれた。
講義内容は、着物のTPOと、着物の種類、帯や布地の種類など。
それらを解説した書籍は山のようにあると思うけれど、口頭で説明してもらうと、紙面の情報だけなら読み飛ばしてしまいそうな、発見があった。
私にとって、一番の発見は、「絵羽」(えば)という模様付けだった。
私はてっきり、着物というものは、反物の状態で、すでに柄つきの生地を、縫製して着物に仕立てあげると思っていた。
もちろん、そういう仕立て方をする着物もあるが、絵羽はちがう。
柄のない状態の生地を、着物のかたちに仮縫いしてから、そこに、絵柄を描いていく。
柄が入る位置や状態が見えているから、複雑な絵柄を描くことができる。
描いた後に、仮縫いをほどいて、染色作業をし、本縫いをするのである。
当然、絵羽の着物は、そうではない着物よりも手がかかり、高価ということになる。
私にとって、なぜこれが一番の発見だったか、は、また後日に説明する。
次なる発見は「江戸小紋」。
江戸小紋は、遠目、ぱっと見には、無地の着物に見えて、近寄ってよく見ると、ものすごく細かい型染めがほどこされているもの。
点描のイメージ、画素のイメージかな。
点描が細かいほど、画素数が多いほど、高い技術になるというわけ。
この江戸小紋って、贅沢禁止令を出された江戸時代だからこそ生まれたんじゃないかなあ。
わかりやすい贅沢はできないから、さまざまな「隠れた贅沢」というおしゃれ分野が江戸の町に生まれて、江戸小紋もその産物のひとつではなかろうか。
無地と思いきや、実はそうではない、わかる人にはわかる贅沢品。
ビギナーズレッスンなので、着付けに関する講義はいっさいないが、着付のレッスンは前日に衣装らくやで受けていたことだし、525円で「発見」をいくつももらったお得感に満たされる。
レッスンが終わった後、しばらく店内をぶらぶら。
ホームページで知った、くるりオリジナルのデニム着物の実物を見せてもらったりする。
デニム着物を顔の下にあててみると、意外にも、ブルーがいまいちである。
ブラックを当てると、ブルーよりは、顔色が明るく浮かび上がった。
たぶん、ブルーが似合うのは、パーソナルカラーが夏の人だろう。
しかし、ブルーよりブラックのほうが映えるとはいうものの、すごく似合う色、には見えないのがひっかかった。
ブラックというより、ダークグレーといった色合いだからだろうか。
もしかしたらこの色も、パーソナルカラー冬の色ではなく夏の色なんじゃないだろうか。
すると、店内に、ふと、目に入ったものがあった。
つづく。