着物のサイズ

私は、着物のサイズに関するふたつの難題を抱えている。
ひとつは、裄(ゆき)。
きものを着ようと思わなければ、この単語、永遠に知らないままだったかもしれない。
首の中心から、肩先を通って、手首までの長さである。
もうひとつは、身丈。
これは、着物の縦の長さ、着物そのものの身長、といった感じのもの。
身につけた状態だと、着た人の肩から床すれすれまでの長さにあたる。
ところが、この身丈、着る人のほぼ身長分の長さが基準。
頭の部分の長さは引かなくっていいの?と不思議に思うが、きものの着付けの仕組み上、この長さが必要なのだ。
6月末に、帯を先に買い、さて、木綿のきものも買おう、と7月に、私はネットを物色していた。
私のパーソナルカラーは冬だから、黒に近いものを選べば、安心なはずだ、と黒に近い木綿を探す。
後日、私は、この色に関する考え方を改めなくてはならないことに気がつくのだが、今日はサイズの話を。
洋のアパレルだけではなく、和のアパレルでも、おりしも夏のセール中。
見つけた黒の木綿のきものは、伊勢木綿で、ベージュの点線のような細縞が入っていた。
同じ売り場で、セール価格だし、伊勢木綿会津木綿の違いを知りたいし、と、薄紫の会津木綿の縞も注文。
サイズを指定して、仕立てることができ、価格は仕立て代込みで、どちらも1万6千円程度。
仕立てを申し込むにあたって、身長とヒップサイズを申告したうえで、裄と袖丈、前幅、後ろ幅を入力する項目が。
ど、どうやって指定すれば、いいんだ?
いくつかのサイトで、身長が165センチ程度用に仕立て済みのプレタのきもののサイズをチェックすると、だいたい似通った数値が多いことに気がついた。
そこで、裄以外の項目は、その多数派の数値を入力した。
裄に関しては、69センチ〜69.5センチが多数派数値だったが、私の身長は168.5だし、5ミリ長い70センチあってもいいかな、と70センチと入力する。
仕立て上がりまで、50日かかる。
着物屋くるりで聞いたときは、二ヶ月かかると聞いたので、この仕立てにかかる日数は相場らしい。
世の中で、きものを着ることが必要な人たちって、夏のきものだったら、3月の終わりに注文を出さないといけないってことだなあ。
さて、注文をしてから三週間ほど経ったころ。
伊勢木綿会津木綿を注文したショップから、着信&メールが入った。
それは。
伊勢木綿のきもの→裄が指定に4センチ足りず。
会津木綿のきもの→裄も指定に足りないけれど、身丈が158センチしか取れず。
つまり会津木綿の場合、身長155〜161センチの人なら適合する158センチの身丈で、168.5センチの私には、ちゃんと着るのがほぼ不可能なサイズ。
そ、そんなことってあるの〜っと驚いたが、これは海苔巻きのような反物の、布幅と長さが関係するらしい。
布幅が、裄の限度を決め、布の長さが、身丈の限度を決める。
さて、伊勢木綿のほうは、裄以外は指定どおりの仕立てができるので、ま、いっかと思い、裄66センチでつくってもらうことにした。
しかし、会津木綿は、身丈が足りない以上、ほぼ私には着ることが無理なきもの。
可能なサイズで仕立てた会津木綿は、これはこれで私に送るけれど、別途、もう一枚追加料金なしで仕立てるので、反物を選んで欲しいとのこと。
じゃ、会津木綿は、届いたら身長155センチの母にあげることにしよ、と決めて、代わりのきものとして、黒と白と紫の細かい格子の伊勢木綿を指定する。
きものが届くのを待つあいだ、裄と身丈について、つらつらとチェックしてみる。
身長が高い場合、これが二大ネックとなって、リサイクルきもので気に入るもの、かつ適合サイズに出逢うことが困難となるらしい。
リサイクルきものって、基本、現代より過去の世代の日本人に適合したサイズだから、あたりまえといえばあたりまえである。
洋服の袖を切らずに着れる私は、和服の袖が不足するのだ。
裄は、縫い代部分を出しても足りなければ、それ以上は長くするのはほぼ無理で、短めな袖も軽快とわりきって着たり、所作に注意して短く感じさせなくする、とかすごそうな方法もある。
身丈が足りないきものを着る方法としては、途中で切って、帯に隠れる部分に別布を足す、とか、トップとボトムでふたつに切って、二部式着物として着るなどの方法も。
すばやくきものを着なくてはならない、料理店や旅館の店員の制服的なきものが、実は二部式着物なこともあるそうだ。
しかし、そういったお直しの仕立ての料金が、数千円から数万円かかったりするので、木綿のきものにそれをやったら、本体の価格より高くなってしまって、ばからしくもある。
そんなこんなで思案しているうちに、仕立てあがった着物がやってきた。
リアルに着物を手にしたとき、私はサイズに続いて、別の問題に出遭うことになる。