洋服とは違うのだ

パーソナルカラーが冬の私は、黒い衣服を選べば失敗はない、という確信をぐらつかせた、黒いきもの。
ちゃんとこのきものを着たうえで、判断しなければ、と思ったのと、きものの着方の復習も兼ねて、8月下旬に、自分のきものと帯を持ち込み、2時間の着付けの個人レッスンを受けることにする。
当日、さあ出発、と、一式を入れたバッグを持った瞬間。
お、重い。
二泊三日旅行並の重さなんだけど。
きものって、こんなに重いんだろうか、と重さに耐えつつ、残暑の厳しい街中を歩く。
到着して、レッスン開始。
体験レッスンと同じく、先生も、一緒にきものを着ながら、教えてもらうレッスンスタイルである。
前回とちがったのは、「絹」と「木綿」の素材のちがいを感じる瞬間が何度かあったこと。
この着付けレッスンはどうやら、「絹のきものを着る」前提らしい。
絹ならばするっと滑るはずが、木綿は滑らない(だから着やすいとも言われる)性質なので、途中で、ゆるみやしわをのばしたり、えもんを抜くためにきものをひっぱる動きのときに、思惑通りに滑ってくれない。
とはいえ無事2時間後にきものを着ることができた。
先生に頼んで、前姿と後ろ姿を携帯で撮ってもらって確認すると。
......なんだか、きちんと着ても、黒のきもの(ベージュの点線縞入りだけど)って、重たい感じになる。
しかも、黒になら、どんな帯も合わせやすいはず、と思ったけど、黒が強すぎて、
オフホワイト地にすもも色と桃色と黒の献上柄の名古屋帯が、負けている。
もっと派手で鮮やかな色の帯を締めないと、黒に負ける。
それに、黒という色の要因だけではなくて、木綿という生地の厚さも、見た目の重さに加担している気がする。
6月末に、最初に着付け体験レッスンを受けたときに、教室側が用意してくれたきものは紬だった。
紬にも、さまざまな種類があると思うけれど、そのときの紬は硬いタイプの生地で、着終わってみて、きちんと着れたんだけど、なんだか着姿が、もっさりしているなあ、という感想を持ったのだ。
イメージコンサルティングで、洋服の場合は、やわらかいものよりも、はりのある生地が似合う、と聞いたのに、きものでは「はりのある生地」が、似合うどころか、もっさりした感じになってしまうということ??
洋服で得た知識が、どんどんゆらいでいく。
洋服を選ぶような感覚で、きものを選ぶべきではない。
そんな気がする。
そして、きものは身体に占める布の面積の大きさゆえに、色だけではなく、素材の影響も、洋服以上に大きい。
洋服は、少々色や素材が似合っていない素材であっても、デザインのカバー力がある。
でも、きもののデザインは、ひとつしかない。
デザインの選択は、なきにひとしい。
布の選択がすべて、といってもいいのではないだろうか。
色、素材、柄も含めて。
.....。
未知な私だけれど、きものの布地に注がれてきた、時間や技術力や情熱の壮大さを想像した。
.....。
とにかく、黒は鉄板、という考え方はまず捨てよう。
それを発見した、着付けレッスンであった。