物量作戦に勝てるか

久しぶりに雑誌「オッジ」を買う。
昨年、8年間表紙モデルを勤めたヨンアが去って以来の、表紙モデルの変化の激しさは凄いなあ、と思っていた。
ヨンアの後をひとりで負わせるには荷が重すぎたか、リーザと絵美里のダブルキャストで引き継いだと思いきや、佐々木希も表紙モデルに加わったり、最近は松島花も登場したり。
辛口なファッションが似合うリーザが、フェミニン系ファッションも意識した、柔らかな雰囲気のメイクとヘアスタイルを取り入れたり、ヨンアが表紙モデルの頃に登場した「表紙モデルの顔のアップ」という撮り方の、リーザや佐々木希バージョンの号があったり、佐々木希が、ヨンアの代表的なヘアスタイルそっくりの、前髪を降ろしたゆるふわロングになっていたり。
なんだかオッジは、いまだにヨンアの影を追っているみたいだ、と個人的に感じる。
それほどに、ファッション誌の表紙モデルの影響は大きいのだろう。
編集部が頭をひねって考えた、凝った特集名やコピーなどの「文言」が、何誌も並ぶ中でその雑誌を選ぶ決め手になることは、あまりないのでは、と思う。
まず表紙、中身の写真の感じ。ビジュアル優先だ。
華のある表紙モデルは、重大な販促ツールなんだろう。
オッジの最新号は、時期的にコートが主役の号である。
コートこそ、シルエットの変化が如実にわかるアイテムだなあ、と読みながらしみじみ思う。
ビッグシルエット、コクーン、ドロップショルダー。
これでもか、これでもかというコートの嵐。
私が手を出してはいけないシルエットのコートだとは、わかっている。
しかし、何百着ものコートのビジュアルを展開されると、自分の感覚が狂っていくらしい。
次第に目が慣れていき、違和感がなくなっていく。
と、そこへ。
ああ、なんて美しいライン、と目を見張る頁に遭遇。
それは、本来は、一足の靴のための宣伝ページで、モデルのリーザが靴に合せて着ていたのは、ビクトリア・ベッカムデザインのワンピースだった。
ビクトリア・ベッカムの服は、細身でタイトで直線的なラインが多い。
リーザのクールな雰囲気、細身で長身な身体が生きる、美しいデザインのワンピース。
それまで大量に展開してきた新しいシルエットの服とは真逆のシルエット。
新しくはないけれど、その美しさはたしかである。
大量の服、大量の、一定の美の基準のプレゼンテーションを浴びると。
美の感覚まで、ゆらぐ。
どうか、ゆらがないで行きたい、この冬である。