アノニマスな服装

モデルとか女優とかアイドルとか、いわゆる女度が高い職業に共通するもののひとつは、華美な服装が、仕事面にもプラスに作用する場合があるってことだ。
「きれいでいること」が、職業上の義務のようなものだから、いつの時代も、女の子にとっては花形職業なんだろう。
もっと広げて考えると、接客業全般は「服装の美」が仕事面でのプラス効果になる可能性がある。
しかしね。
接客業じゃなく、机やモノに向かう仕事の場合、プラスというよりマイナス効果になるんだよ・・・とつくづく思う。
室内での事務仕事でも、けっこう汚れるもん。
だから服が汚れるかも?しわになるかも?乱れるかも?って考えていると、集中力を削がれる。
見た目を優先した服装は、必ずしも身体に優しい服装ではなく、その点でも仕事にまわすエネルギーが削がれたりするし。
昨日とちがうコーディネートを!なんて考えるのも、時間をとられるわりに、仕事上での効果がない。
なんてことを考えていたら、おしゃれにもコーデにも神経をとがらせずにすむ服装の処し方、のヒントになりそうな、いくつかの情報が、徐々に集まってきた。
これらの情報を整理すると、そういう服装の処し方には、ふたつある。
キャラクター化と匿名化だ。
どちらも、自分の着るものを定番化(ユニフォーム化)して、「着るもの」にわずらわされる時間と労力を減らすというものだ。
「キャラクター化」は、スティーブ・ジョブズ刑事コロンボアインシュタインピカソなどなど、その人自身の存在が確立していて、その人なりのトレードマーク的な服装をしていること。
その人の着るものも含めて「キャラクター化」しているので、流行モノか、おしゃれかどうか云々を超越する。
「匿名化」は、いつも同じような服装をするという点では、「キャラクター化」と同じだけれど、キャラクター化ほど個性を追求せず、むしろ個性を避けて、シンプルで基本的な服であることが多い。
たしか、デザイナーのジャン・ポール・ゴルティエは、普段着の内容を問われて「痩せたときはネイビーのボーダーシャツ、太ったときはブラックのボーダーシャツ」と答えたくらい、ほぼ毎日同じ服装らしい。そうする理由は、自分の服のことに時間を使うより、人に服を着せてあげることに時間を使いたいからだそうだ。
日本のスタイリストの草分け的存在の原由美子も、若いころは、仕事相手に自分を覚えてもらうため、いつも同じような服装をしていて、今でも、定番の洋服コーデ(パンツ、Tシャツに、Vネックカーディガンかジャケットというシンプルなもの)は決まっているそうだ。(プラス、別途、外出着には着物を楽しんでいるようす)
名前を忘れたけれど、どこかのクリエイティブディレクターで、年中白シャツで、周囲にはこの人といえば白シャツ、と言われている人も匿名化の例に含めていいかも。
面白いことに、服装を匿名化したからといって、その人自身が匿名化するというわけではないみたい。
むしろ、服装よりその人のあり方、風情や雰囲気が浮き上がってくるような気がする。
私もこれからは服装は匿名化を目指してみよう。
匿名ってアノニマスというらしいんだけど、今「アノニマス」で検索すると、どちらかといえばブラックなイメージのものがひっかかってくる。服装におけるアノニマスは、陽性+ナチュラルなイメージである。