100人コーディネート展

日本橋で開催された「きものサローネ」の「100人コーディネート展」を会社帰りに見に行く。
きものの販売展示ではなく、百人による、襦袢も帯も小物も履物もトータルコーディネートされたきもの姿百体がホール内に展示されるというもの。
これは鑑賞オンリーではなく、自分がきものを着るときに...当事者、パフォーマーの立場のときに活かせるように、学びとりたいから、という理由を自分の中で仕立て上げて、行ったのだった。(別に行動の如何を誰かにつっこまれたりするわけじゃないんだけど)
どんな行動にせよ「学ぶ」という下心があるだけで、一気に能動的な行為になるもんだ。
その展示会場、百のきものが織り成す森を巡り歩いたあとは、ああ面白かったなあ、と至福に包まれる。
この至福は、8月下旬に、着物で参加歓迎の帯留づくりとランチのイベントに参加したときに、似ている。
その日は暑くて、集合時間は朝10時半で、それに間に合うようきものが着れる自信がなかったし、帯留づくりという作業行為があるイベントだし、ま、洋服で行っちゃえ、と洋服で参加したら。
十五名ほどの参加者のみなさん、ほとんどが着物で参加。
時期が夏だから、浴衣の人もいるだろうな、と思っていたが、浴衣は浴衣でも、質がちがう感じで、こういう浴衣があるんだ、と驚き。しかも、着た人たちはみんな楽しそう、幸せそうな、「いい顔」をしている。
イベントそのものも楽しかったけれど、さまざまなきもの姿に、目の保養をさせてもらって、学ばせてもらって、至福のエンドルフィンに満たされて、帰宅したとき「楽しかったなあ・・・」という言葉が自然に素直に口からもれた。
そのときの感じに似ている。
約15人のきもの姿でも至福につつまれたのに、百体のきもの姿(中身は生身じゃないけど)につつまれる至福といったら。
その中で私が一番気に入ったのは、木綿の着物と木綿の帯の「だるま屋呉服店」山口貴子氏のコーディネートだった。
「木綿を泳ぐ」というテーマのそれは、藍のトーンの麻の葉模様が主体の出雲絣に、オフホワイトの木綿の帯の上を鯉の形の帯留が泳いでいる。
百体のきものの中には、豪奢なものや、ポップなものや、クリスマス風コーデなど、華やかなものが山のようにあったが、このきもの、着たら絶対気持ち良さそうだなあ、身体を優しく包んでくれそうだなあ、木綿を泳ぐというポエムなテーマもぴったりのコーデだなあ、と迷わず一番のお気に入りに決定、アンケートにもそう記したのだった。
ちなみにこのきもの、青戸柚美江さん作の出雲絣ってどんなの?とウェブ検索してみたら。
米寿を超えた青戸氏(非常に可愛らしい感じのおばあさまだった)は、なんと畑で綿花を育てる段階から手がけ、手つむぎの糸、手織りで作られる、希少な技術の織物とのこと。(帯のほうも、福永世紀子さん作の土佐縞木綿というもので、糸は綿花から手つむぎだそう)織物の世界は深い・・・。
思えば、ファッション雑誌には、洋服のコーディネートが軽く100を超える数が掲載されているが、こんな至福には包まれない。
100以上あっても、実はバラエティに富んでいないし、売り手の思惑も作用しているからかもしれない。
「100人コーディネート展」は、その逆で、百人それぞれが自由にコーデイネートを施したから似たようなコーデがほぼ皆無でバラエティに富み、売ろうという作為を持ったコーデもほぼ皆無だったから、と思う。