発熱の年越し

実は、12月に、人前で発表をする、ということにトライしてみた。
たった1分20秒ほどだし、内輪の発表会だし、と臨んでみたら、そのたった1分20秒のあいだに私の意志とは無関係に、左足が震え、声も震え、練習よりも不出来な結果。
自分の意思とは関係なくこれほどの緊張に陥ったのは、入社研修の2分間フリースピーチのとき以来かも。
意外にも、仕事で喋るときは緊張しないのに、仕事以外となると、こどもみたいに緊張する・・・。
この緊張を起こす自分の過敏さを憎んではいけない、その過敏さが私に何か美点をもたらす作用をしている可能性もあるのだから、憎んではいけない、と言い聞かせながらその日は過ごす。
あまりにも単純なことに、その落ち込みからすっと立ち直ったのは、発表会の報告画像にセレクトしてもらったせい。
洋服で発表しても大丈夫だが、着物で発表のほうが喜ばれる発表会で、着物参加だったので、着物の人は優先的にセレクトしてくれたみたい。なんだかそれだけでちょっと嬉しくて、しかも絹の着物の人たちの中、まさかの木綿の着物だったし。
こどもみたいに緊張して、こどもみたいに立ち直って、となっていたところへ友人が家にたずねてくる約束だったので、部屋をかたづけたり、ふだんより奮発してお菓子を買ったり、という準備をするのも、非日常な感じにちょっと高揚感があって、友人が来て、よもやま話で盛り上がって、数少ない手持ちの着物を見せたりしたら、発表会のときの着物を指して、私の身長にはこのくらいのほうがかっこいい、と友人がコメントしてくれたりして。
着物と帯のコーディネートを、友人もすっかり面白がって、いっしょにあれやこれや。
趣味でキルトをつくる友人なので、布同士の組み合わせ、という点で着物コーデはキルトに通じるものもあり、面白いらしい。
そんなこんなで12月の終盤にさしかかり。
昨年ずっと、一度も熱を出したことがなかったのに、年末に突如、38度超の発熱。
もう終わりってときにナゼ? ロスタイムに入ってからナゼ? と熱でまっとうにまわらない頭で年越し。
発熱は、風邪のウィルスを退治するため必要な加熱だから、解熱剤で下げず、放熱したほうがいいとのことで、ウィルス、早く死んでくれ〜と、熱に耐える。
二日間で熱はひいたけど、呼吸をするたびに肺から、穴のあいたアコーディオンの蛇腹部分みたいに、ぜいぜい音がする。
熱がひき、今度は痰が蓄積しちゃった状態。
以前、鼻水や痰は、ウィルスと戦った白血球の死骸である、と聞いたので、戦死者がいっぱい出たな・・・と納得しながら、累々たる死骸の排出に耐え。
...なんて書くと悲惨な年末年始だけど、なんとか三回ほど外出できて、いちいち面白かった。
面白かったのは行動理由に「着物」があって、それも家族ぐるみだったから。
三ヶ月前から着付けを習い始めた妹はすっかり、私以上に着物ラブな状態に陥っていたので、家族で着物ランチをしたり、一般客を入れてくれる着物問屋街の店で、1月2日の初売りにトライしたり、(5円の足袋、55円のゆかた、2015円の手織り紬の反物、という何かの冗談みたいな価格で新春のお買い物)と病んでいる身体でせいいっぱい楽しんだのだった。
休暇が終わり、仕事初めとなった。
まだ肺の中の戦死者を葬り去っていないんだけど。ごほごほ。