映画:ビッグ・アイズ

ヒロインのマーガレット・キーンは、ビッグ・アイズな人間。
その夫、ウォルター・キーンは、ビッグ・マウスな人間。
画家は、視覚的な能力が高い人たちだ。
ただ、言語力も高いとは限らない。彼らの語りたいことは、言語ではなく、その作品によって表されるから。
私が小学生のとき、担任の先生から「口にするより目で訴えていく子だね」と言われた。それがいいことだとも悪いことだとも言わずに。
目で訴えていくというつもりはまるでなく、ただ臆病すぎて、自信が無くて、言葉を口に出す勇気が持てなかっただけである。
でも、さすがに大人になるにつれ、口に出す勇気、声に出す術を身に着けていったほうがいい…自分を守るために、誰かを守るために、と思うようにはなる。
今だに、思いを声に出すことはすごく苦手だけど。
マーガレットの描く、異様に目の大きなこどもたちは、視覚能力の膨大さ、心の繊細さ、弱さゆえ、目で訴えていくしかない人間のキャラクター化のようだ。あたかも。
ただ目で訴えていくって、…現実には可能か?
視覚は、どうしたって、受動的な器官である。
視覚能力が高い人たちは、高精度なアンテナは持っていても、スピーカーを持っているとは限らない。マーガレットもそんな人。
マーガレットを自分のゴースト・ペインターに仕立てたウォルターみたいな人、現実に、いるね。
実は、最も弱い立場の人間が、先手を打って強気の立場に出ることがある。実は最も強い立場の人間を、支配するために。
これは目で訴えていくことしかできない人が、声を手に入れるようになっていくまでのお話でもある。
声を手に入れるきっかけが何かは、人それぞれ。