不労所得…

不労所得について、先日、初めて考えてみた。
きっかけは、行きつけの整体マッサージで。
マッサージ師の男の子は、当初は雇われて働いていたが、そこを辞めて二十代にして独立し、固定客(私も含まれる)にこっそり開店の連絡をくれた。
独立して、ほぼ二年となる。
もともと、若いのに非常に整体が上手だったので、彼じゃないと!という固定客がいっぱいついていた。
独立したら、ついてきた固定客たちが、さらに別のお客を紹介してくれる。
なので、お客が来なくて困る、という事態にはならず、むしろ手いっぱいで、新規のお客は今はとっていない売れっ子ぶりとなっている。
しかし。
「僕が今以上に収入を増やすには、どうしたらいいんでしょうか?」
と、前回の施術中に聞かれたのだ。
ひとりで店を営む彼の周囲にいる社会人の先輩は、お客たち。
だから、たぶんお客たちから知恵を伺いたいようなんだけど。
うー…私、コンサルタントじゃないしなあ…勝間和代氏ならこういう質問は得意なんだろうが。
彼のような仕事の場合、自分が仕事に従事している時間だけがお金を生む、という状態だ。
作家が本を出版したら、あとは作家の労働従事時間と無関係に本が売れるとか、ネット店舗みたいに、店主が店番していなくても、寝ているあいだにでも、商品が売れるかもしれない状態にはならない。
人間にリアルタイムで向き合う技術者の宿命。
デンタルケア(歯医者)、ボディケア(フィットネスやエステやマッサージ)、ヘアケア(美容院)。
めんどうに思うこともあるけれど、この3つのケアは、自分の身体に誠意を示すつもりで、定期的なメンテナンスをしていかないと、と思う。
私が長年通い続けている、この3つのケアの技術者は、全員、手先の触れ方が繊細。そして、個人事業主(あるいはプライベートレッスン)なのだ。
人間相手のケアの技術者で、手先が繊細じゃない人って、信じられないことにたくさん遭遇する。
手先がぶっきらぼうというか、触れ方が乱暴で雑。
そして、この3つのケアって、不労所得がひねり出しにくい仕事内容である。
歯医者さんが考えた歯ブラシ、とか、有名なマッサージ師が考案する健康器具とか、有名エステティシャンがつくったボディクリームとか、物販系の不労所得をプロデュースする方法は見かけるなあ。
でも、私が気に入って長年通い続けている技術者って、みんな…。
お客さんをきれいにしてあげたい、癒してあげたい、治してあげたい、って思いが強くて、好きで、その仕事に従事している気がする。
みんな個人事業主で、自分自身が代表者だから、仕事のやりかたは自分が決めていい。それなのに、そういう繊細な触れ方で、手の抜かない仕事ぶりなんだもの。
彼の労働従事時間が満タンならば。
「単価を上げる気はないの?」
「単価を上げるのは嫌なんですよ。自分の体がつらかったり、弱かったりするのを、治しにきているお客さんに対して」
ほらね、こういう子なのだ。
店舗を多数持つボディケア系の会社は、売り上げよりも安い労働費で雇用者を働かせて、収益を集める、ていう手口だもんなあ。
別に店舗をつくって、技術者を雇って、その差益を得ていく、という手も、彼自身がそうだったように、いい技術者は独立するために雇用者のもとを去っていくから、自分が従事できない以上、ケアのクオリティを落とすことになり、それも本意ではないみたい。
とりあえず、私からは、今すぐ収入アップにはつながらないかもしれないけど、別の技術も身につけていったら、と提案。
たとえば針灸とか。彼のように手先が繊細な子なら、針灸でも絶対に優れた技術者になりそうだし、そちらのほうがもしかして、整体マッサージほど体力を使わずにすむかもしれないから、持続力が高いかも。
「針灸かあ、学校に3年通わなきゃならないんですよね」
「…もしかしたら3年後に、あのとき通い始めていたら、今頃もう卒業してたんだなあ、って思う可能性ない?」
「あります…」
新しいことを学ぶにもエネルギーがいるから、まだ二十代の男の子なんだし、お金を即座に増加させようって考えるより、お金に関係なく、時間とエネルギーを使ったほうがいい気がするんだよなあ。
美味しいものを食べたり飲んだり、お買い物を楽しんだりするのは、歳をとってからでもいくらでもできるけど、学ぶエネルギーって、若いうちの方があるぞ。
帰宅してから、いっそ、本業と全く関係のない、大家さん的な不労所得を少しでもゲットしておく、という手もあるかも、と思った。
彼のお客の中には、億単位の物件だけを扱う不動産仲介業の人もいて、その人にも聞いてみる、と言ってたなあ。
不動産業ならともかく、人間を直接ケアする技術は、お金と相性が良さそうには見えない…。
そういう仕事を選んだ時点で、大金を目指すタイプじゃないようにも思える。大金優先なら、そういう業界に行くと思うの。
かくいう私の勤務先の業種も、大金にはほぼ無縁…。でもそのことをわかってて、選んだんだよね?と、どこかで声がする。
次回の施術で、他にどんな知恵を得られたか、彼に聞いてみよう。