共感してる…

男性より女性の方が、共感力が高いというけれど。
初対面にして、一時的に関わる女性どうし、は確かにお互い共感モードを高くしあっている気がする。
いま、このとき、この場だけでも、親しくなろう(そのほうが楽しい時間を過ごせるし)、という無意識が働くみたい。
しかし、<口には出さないけど、私たち、今、まったく同じことを考えているよね…>という共感シチュエーションに出会うことは、頻繁にあるものじゃない。
私がその状況に遭遇したのは、婦人科だった。
自分の身体に関わるさまざまなケアは、どれも個人事業主ばかりになっている、と先日書いたけど、婦人科もそうである。
女医さんが個人で開院したそこは、五年くらい前から、年に2回程度の予防検診に通っているが、毎年毎年、待合室の患者数が増加する一方。
世間では若い女性が減り続けているというけれど、ここに来ている若い女性の数は、私が見てきた限りでは、増加しつづけているよ。
ミもフタもない言い方をしてしまえば、凸型のものより、凹型のもののほうが、汚染されやすい形状だもの。
女性たちはそういう危険をふまえて、身体をケアしていく必要がある。
ちなみに、私が気に入ったところは、婦人科に限らず、他に通っているケアでも、どんどん客が増えて、月1回ペースで行くところでも、いまや三ヶ月先の予約までとっておく事態になっている…くらい繁盛するのはなぜ?!(そのことを話すと、じゃ、もし自分がお店を開いたら呼ぶから来てよ、と複数人に言われる…)
三年くらい前のこと。そのときその婦人科の待合室には十五人くらいの女性が座っていた。
初診のときは、あらかじめ問診表に記入をするのだけど、突如、看護師さんが、問診表を手に慌てたようすで待合室に入ってきて、ひとりの女性に声をかけた。
「あなた、いま妊娠五ヶ月ですって?!」
婦人科、というのは、産科ではないから、妊娠中の女性を診ることはできない…のだと思う。妊娠したことがないからわからないけど。
しかし、妊娠五ヶ月と自覚している状態、って、ふつうもう産科の主治医がいるはずなんじゃないのか? なぜこの医院に来ているんだろう?
周囲の女性たちをさらにぎょっとさせたのが、その女性が話し始めたとき。
話の内容そのものが、まったく思い出せない。なぜかというと、その女性が発した言葉には、ものすごく濃い方言のなまりがあって、そのなまりの濃さに驚いたから。
もしかして、つい先週、東京に出てきた?と思うくらい、無防備な、濃いなまりだった。 しかも妊娠五ヶ月の身体で?
「妊娠中だと、うちでは診ることができないの」と看護師さんに告げられて、その女性は医院から、出て行った…。
待合室に残された女性は全員、しーん…と沈黙。
でも、確信できた。今、女性全員の上に、ひとつの、漫画のモノローグふきだしのようなものが、浮かんでいる。
(だ、だいじょうぶか、あのコ?!)
というふきだしが。
あれほどまでに、女性同士の「共感の一体感」を経験した瞬間は、まだない。
その翌年から、その婦人科の医院には、区内の病院一覧の冊子が、「ご自由にお取りください」の表記が添えられて、置かれるようになった。
区内に存在するあらゆる科の病院・医院の住所と連絡先が示された冊子。
この冊子があれば、ここでは診れない、という人に、何も持たせずに追い返すことはしなくてすむということだから。
三年たった今、あのときと同じ状況に遭遇したら、こんどはその子の後を追いかけて、事情を聞いてみる私でありたい。
あのときは、とっさの出来事と驚きで、そこまで冷静になれなかったからできなかったのだ…と思いつつ、いやあらゆることは「とっさの出来事」であることの方が多い…。
「共感」の次に、必要なのって? 「起動」かな。「起動」できる女でありたい…。