肉球のキモチ


「鄙の海」の浜辺を、朝、歩いたとき。
白い犬を連れて散歩に来ている人がいた。
海辺に白い犬って、なんて似合うんだろう…と、見ほれる。
私は、靴を履いたまま、浜辺の砂を踏んでいたので。
靴を脱捨てて、裸足になるほどに、欲望の急上昇をさせることができなかったから。
浜辺のテクスチャーをじかに感じている、白い犬の肉球のキモチを想像していた。
浜辺の砂も、気温を吸収するのかな。
ほんのり温かくなった濡れた砂の感触で、肉球は春を悟っているのかな。
アスファルトの上を歩く、犬の肉球が立てる、乾いた足音も好き。
アスファルトは、肉球の足音を跳ね返している。
浜辺の砂は、肉球の足音を吸収している…きっと。
土の上や、草の上や、砂浜の上で、育ってきた肉球は、アスファルトに挑まれる感じ、跳ね返される感じに、ちょっとショックを受けるのかも。