キルよりタベル

久しぶりに春の服を買おうかな、と思って伊勢丹に行ってみたが、何も買わずに終わる。
店内を巡りながら、考え込んでしまったのだ。
どうしても新しい服が欲しいわけじゃなし…服を見せたいために服を買うわけじゃなし…。
結局、見る人を感動させるのは、服じゃなくて、服を通して浮き上がる身体、服に覆われていない部分の身体とか、その人を覆う雰囲気のようなものだと思う、今日このごろなので。
それは若々しく美しい体型・雰囲気かどうかというわけじゃなくて、生命体として、好ましいかどうかというもので。
結論として、今日は無理して服を買う必要はないや、と手ぶらで帰宅。
正確に言えば、手ぶらではなく、服は買わなかったが食品は買った。
弁松の白飯弁当と、仙太郎の柏餅とぼた餅。…なんだかお年寄りのショッピングのようだ。
弁松の弁当は、絶対に電子レンジで温めてはいけない。冷たいまま食べて美味しくつくってある弁当だから。
なんで冷たい白飯と冷たいおかずが、こんなに美味しいの?と感動しながら食べるのが楽しみのひとつなのだ。
今日のおかずには、たけのこが入っていたので、そういえばたけのこ、この春は食べずじまいだった、とそろそろ立ち去ろうとしている春の裾をつかまえたような気分で味わう。
初夏のお菓子、仙太郎の柏餅の包みを開けたら、解説書が一枚入っていて、「柏餅の葉は、男性の袴、餅は女性を表すものなので、餅のかたちは本来、はまぐりのような貝っぽいかたちである、仙太郎の手作りの柏餅とちがって、機械でつくる柏餅の餅は、つるつるで丸い」というようなことが記されていて、学ばせてもらう。
たしかに、仙太郎の柏餅の葉をひらくと、ちゃんとはまぐりっぽいかたちの餅があらわれた。
じゃ、柏餅って、葉(男)と餅(女)で、ちゃんと陰陽が入っているんだ。
お菓子に陰陽が入っている…和菓子の世界、深い。
ぼた餅のほうは、明日の朝、食べます。