不幸の免疫 その2

前記事からの続き。
U君が亡くなった、という電話を受けたとき。
あっけにとられた。
奇妙な表現だけど。
その直後に恐怖心が自分に襲い掛かってきた。
明日、自宅で通夜だから、と電話の向こうで告げている声が、半泣きで。
…亡くなった理由を言わない。
「言えない死因」は、ひとつしかない…。
電話を切ったあと、私の頭に浮かんだのは。
もしかして、U君が死んだのは、私のせい?!
というものだった。
まったく、見当はずれの発想だ。
でも、そのときの私は、パニックに近い状態だった。
すぐに彼に電話をかける。
U君とは彼も友人づきあいがあったから。やがて彼にもこの連絡が行くはずだった。
U君の訃報に、電話に出た彼もおおいにショックを受けていたが、そのまま昨日のことを私が話して、私のせいで?!と問うと。
「それは、ありえない」
と、きっぱり否定した。私の考えがあまりにも見当はずれゆえ、半分苦笑気味の声だった。
今なら私にもわかる。当事者じゃなかったら、私もそう判断できたろう。
U君の死は、U君自身がおそらく時間をかけた末に選択したことであって、当日の私の電話は、何も関係ないと。
しかし、死の当日に電話で話し、会う約束をする、そして待ち合わせ場所に現れなかった、というあまりな偶然と、若かったこともあって、否定されても私は信じられず、彼との電話を切った後も、ずうっと恐怖が消えなかった。
どうして私があの日、そもそもすごく近しい関係の友人でもなく、ここ一年、顔をあわせてもおらず、一度も電話をかけたことがなかったのに、突然、U君に電話をかけたのか、今でもわからない。
だけど、だんだん、もしかして、そういう不思議なことが、人間同士に起こることがあるのかな…と、後日、思った。
それから約一年後、思いもかけないことに、U君と同じ「人生の非常口」のドアの前に、私も立っていたから。
つづく。