衣にちにち

群ようこの新刊「衣にちにち」を読む。
内容は、衣服日記。
群ようこ氏の、日々着るものへの、淡々とした葛藤は、ウクレレのリズムみたいな穏やかさがあって、つらつら読むのにぴったりで、嬉しい。
「某月某日」の「月」の部分だけでも表示しておいてくれると嬉しかったな。
着物の描写がときどき出てくるので、まだまだ初心者の私はその時期を記してくれたなら、より嬉しい。
他人の着物姿を見かけるだけでうれしくなるとか、素敵な着物の人のあとをちょっとついて歩いてしまう描写に、うん、わかるわかる!とうなずく自分。
洋服だとそんなことはないのに、着物だと、他人のでも嬉しいんだよね。
(そういえば、先日NHKで見た、IKKOと桂由美のスイッチングインタビューで、桂由美が、日本の代表的な織のひとつ、博多織は、ヨーロッパの織物に劣らぬ素晴らしい技術だから、自分だけではなく世界のデザイナーに使ってもらうべきだから、と織元に世界進出を勧めたけれど、経営的、資金的に、とてもそんな力はないってことだった。
でも、この金色の博多織の生地、ローマ法皇に似合うんだけどな〜と桂由美は思い、人を介して、博多織を使ってデザインした法衣を、ときのローマ法皇に献上。
もちろん、献上は受け付けても、着てもらえるかどうかはわからない。しかし、たしか復活祭の行事で、きらきら金色に輝く博多織の法衣を、見事に着てもらえたそうだ。
たしかに、はりのある絹織物、博多織は、帯だけのものに限らず、構築的なフレアスカートやドレスに、似合いそう。)
群ようこ氏の洋服の選び方は、戦略的じゃなくていいなあ。
好きなもの、自分がいいな、と思うもの、着たときに身体が心地よいもの、という選び方。
…着物の選び方に似てない?
何が流行か、何を着れば一目置かれるか、という選び方じゃないんだよね、着物って。
これ、好き!だもん。
しかも、好き!が、人それぞれで違うもん。
若い頃から着物好きだった群ようこ氏は、洋服にも、自然に自分軸ができているのかも。
食べ物は、凝ると体に負担がくるが、着るものは、負担がこないぶん、そして、年齢が変わると似合うものもどんどん変わるから、ネタとしては持続性があるのよ。
また「衣」のエッセイ、書いてください。