映画:ジュラシック・ワールド

女性恐怖である。
白い服を着た、ジュラシック・ワールドの最高運営責任者、クレア。
遺伝子を操作して人工的に作った、最強最大の恐竜、インドミナス・レックスを最初に見た者のセリフ。
「白いんだな」
「She is...」(つまりインドミナスはメス)
そこで、わかる。
極端なほどに、全身を白で装った女、クレアに、メスの白い恐竜。
恐竜に託されている、恐ろしきものの正体が、女だってことが。
インドミナスは二体つくられたが、共食いにより、一体だけが生き残った、という説明も暗示的なのだ。
インドミナス(女)は、女に滅ぼされると。
(インドミナスが、体内に埋めこまれた発信機を、自ら食い破って逃げたと説明するシーンで示される発信機も、形状や大きさから「男性器」を暗示していて、自らそれを放り捨てるインドミナスが、男性の支配下から逃走する凶暴なまでの力を持った女のイメージとも見ていい。だって、技術的には、もっとミクロなサイズの発信機がつくれそうな気がする)
それに、四匹の、ヴェロキラプトル
調べてみたところ、四姉妹という設定。つまり、全員メス。
小型だが知能が高く、獰猛なラプトルの調教に取り組む、飼育係の男性、オーウェン
そのオーウェンが、四匹のラプトル(=四人の恐ろしい女の子)に取り囲まれ、命がけでなだめようとしている図が、別物に見えてくる。
女性恐怖の図、そのものじゃない?
この映画に登場する女性(クレアの甥っ子兄弟の母も含め)は、男性にとっての理想から外れた、恐怖の対象になりつつある女性たち。
甥っ子兄弟につきそう、クレアのシャドウのような助手の女性の存在感のなさは、「理想的じゃない女性のイメージ」を体現するだけの役回りだから、ホノグラムのごとき存在の薄さなのだ。
その助手の女性が、翼竜にもてあそばれ、やがて・・・という末路は、男性の理想に反した生き方をしている女性は、このように罰せられる、ということ。
助手の女性の末路は、インドミナスの末路の前座でもあるが。
白い服がどんどん汚れ、身体に貼り付き、鉤爪のごときピンヒールで、疾走していくクレアは、ビジュアル的にも、インドミナスに近づいていく。
アメリカの地産文化ともいえる、「ミソジニー(女嫌い)」と「恐怖」を、交配させた映画。
だからヒット間違いなし。少なくともアメリカでは。