恋が加わると

司法試験漏えいの事件について、思った。
組織の中で、上位の立場の男性が、配下の女性に「お気に入り」をつくることは、ふつうにある。
一種の恋愛感情にあるんだと思う。盲目的な。
明らかに組織内の自分の立場は悪くしているはずなのに、彼女のために、彼女の愛情を得るために、献身的に便宜をはかる。
他の部下には行かせずに、彼女だけに高価な食事とか、高価な研修とか、華やかな仕事を与え、人事面での高評価や抜擢(つまり収入増となる)もする。自分の権力を使った、プレゼントをする。
それは決して、彼女を育てて、新たなステージに発たせたいわけではない。彼女を手放すことはしない。
彼女をずうっと、自分のそばに置いておきたいから、彼女に居心地の良さや利益を与える。彼女が逃げないように。
自分の人事異動があったら、同じ異動先に、常にいっしょに彼女も異動させている、という露骨な人も現実にいた。
ただ。
たいていの組織内で、上の状況が黙認されているのは、それによって、大惨事を引き起こすまでの弊害は、たぶんないからだ。
上の立場の人間が、ごきげんならそれでいい、ってところだろうか。
たとえば、入社試験や、人事評価を、筆記テストの点数だけで決めるというのは、実は公平にして、客観的なことかもしれない。
でも現実はそうではない。
面接があって、採用する側の人間の思惑が入って、決める。主観が入る。どうしても。
高校や大学入試でさえ、筆記試験は受けずとも、推薦入学とか、面接と小論文のみで合格、というドアがある。
これは、筆記テストの点数では合格不可な人でも、合格させることができるドアとも言える。
強引に、筆記テスト・実技テストの点数=実力と、とらえると。
実力主義じゃないと、その人が社会に送り出されたとき、多大な弊害が及ぶものがあるのだ、どうしても。
医師もそう、美容師も、鍼灸師もそう。「国家試験」にあたるものは、ぜんぶそう。
実力が、ある一定の基準に達していない人にまかせたら、人々に甚大な被害を及ぼしかねない仕事。
これだけは、ひいきやお気に入りやコネで合格させたら、社会が迷惑する。
弁護士もそうなのだ。
お気に入りの彼女が最も欲するものは、司法試験合格だった。間違いなく。
だから、最大のプレゼントをしようという気持ちになったのかもしれない。
このプレゼントをしたら、彼女が今後、法曹の世界に在る限り、永遠に自分の手元にあるも同然、ということも意味したから。
もちろん、このような、組織内で、盲目的恋愛感情に近いお気に入りの女性をつくって、権力による献身をするという男性は、少数だ。
本人は、その行為が、おかしいことだとは、全く思っていないようすだから、性格というか、性分というか。
そういうことを、全くしない人は、しない。
これはひいきなんじゃないか?という便宜を特定の部下にはかる上司もいるけれど、それって自分のためというより、部下のためで、自分の元から、いつか手放すために、って感じ。それは愛情かな。恋愛感情じゃなくて。
「恋」が加わると、わがままになるな・・・。