無心。

一ヶ月ぶりに、Kくんの整体に行く。
先月は、ふくらはぎを伸ばされているときに、い、痛い...と私がつぶやいたら、
「耐えられる程度にちゃんと加減してますからだいじょうぶです。僕がどのくらい○○さんの整体をしてきてると思ってるんですか〜」
と言われて、えーっとそうか・・・五年間、毎月私の身体の状態を見てきてもらってきたんだ、と思う。
Kくんは、お客さんによって、力の加減のしかたがわかる、っていう。
私は月に1回だけど、週に1回のペースで毎週くるお客さんもいるそう。
お客さんのひとりに、北海道に二週間仕事で出張するから、そのあいだの費用はぜんぶ持つので一緒に来てくれ、と言われて、他のお客さんの施術があるから、って断ったことがある、って言ってた。
今回の整体で、頭のつぼ押しをしてもらっていたとき、私がうとうとしてきて、半分眠っているような状態になって。
そうしたらKくんの手が止まって、私の両側のこめかみに、手のひらをあてているだけになった。
あれ?つぼ押ししないの?とぼんやり思ったけれど、それはそれで、こめかみがあたたかくて、心地が良かった。
整体がぜんぶ終わって、帰り道を歩いていたとき、ふっと気がついた。
私がうとうと眠りかけていたから、「うとうと」を優先したんだ、Kくんは。
複数の施術者がいる整体やマッサージの店舗に行くと、施術内容や施術手順もマニュアル化されている。
でも、Kくんは、人によって、状況によって、施術の仕方を変えてしまえる力のある子なんだ。
いや、力というより。
心だなあ。
半分睡眠状態にあった私を、眠りを妨げてつぼ押しをつづけるのでもなく、眠り優先で施術を放り出すのでもなく、ただじっとこめかみに手のひらをあてたままで静止していたのは、Kくんの心の判断によるもの。
そういえば、私が気に入って通い続けている、身体のケアをしてくれる職業の人たちって、みんな...もっている共通点って。
心があるんだ。ケアの仕方に。
がーん。
自分が、心がこもった仕事をしているかなんて、はじめて考えた・・・。
がーん・・・。無心な自分・・・。