映画:スティーブ・ジョブズ

死後の画家の回顧展が、画家の人生を概観させてくれるようなワクワク感に満ちているように、この映画も、死後の有名人の人生の概観の、「まとめ」かたにワクワクする。
ジョブズは、離れる人である。
両親から離れる。
ステップファミリーから離れる。
魅力のない商品から離れる。
魅力のない仕事相手から離れる。
魅力のない会社から離れる。
魅力のない人間から離れる。
縁から離れる。
プレゼンの舞台裏で、前回のプレゼンから今回のプレゼンのあいだに、ジョブズが離れたものが何だったかが、明らかになる。
離れられたほうは、哀しみ、怒り、たいていはジョブズにすがる。
追いかけてきた、「離れたもの」を、ジョブズは振り返らない。
何かから離れるたびに、発展していく人なのである。
そういう人もいるんだと、ワクワクする。
古い縁から離れ、あいたスペースに、新しい縁を呼び込む人。
もちろん、自分に関わったもの、縁を、すべてをいだいたまま、大きくなっていく人もいるんだろう。
キュレーター:ダニー・ボイルによるスティーブ・ジョブズ回顧展、あるいは「まとめ」を見させていただきました。