リアルという薬

幻想を醒ます特効薬は「リアル」だ。
テレビや雑誌や書籍に、以前は幻想を抱いていた。
そこで示されることは、作家や製作者や編集者という、知性のフィルターを経た情報なんだろうと思っていた。
でも、じぶんに「リアル」を注射されていくと、幻想がじょじょに、減っていく。
実際にじぶんが社会人になってみると、職場を舞台にしたあらゆるテレビドラマは、戯画化されすぎていると気がつく。
一番の劇薬は、リアルな知り合いが、幻想の世界に登場することだ。
リアルな知り合いだった人が、本を出版していたり、雑誌やテレビにコメンテーターとして、知性のフィルターを通過したひとりとして、祭り上げられていたりすると。
その人がどういう人か知っているだけに、知性のフィルターという幻想が、がらがらと崩れていく。
フィルターの機能が、すっかり信じられなくなる。
ひとかけらの「リアル」、一滴の「リアル」が、幻想を壊す「ポイズン」に、「メディシン」になる。
悪貨は良貨を駆逐する、という言葉が、リアルに身に染みる。
目の前に、にぎにぎしくはではでしく踊りくるっているのが悪貨だとすると。
良貨は、見えないところ、隠れたところに、あるのでは?
それは、じぶんのフィルターをつくらないと、見つけることができないのでは?