カーディガンのその後

人は変えられない。
ターコイズブルーのカーディガンを母に送ったら、値段を聞かれた。
定価で三万八千円くらい、バーゲンで買ったから二万五千円くらい。(ジョンスメの日本販売価格だから)
と言ったら。
送ってから、二週間たっているのに、まだ袖を通していないという。
そんな高価なカーディガン、着たことがないから着れない〜と言うんだよ。
じゃ、いつ着るんだ?七十歳超えてるのに?棺の中で着るのっ?と口から出かけたが抑えて。
母にとっての服の基準価格は、たぶん何十年も、変わらない。・・・この先も変わらない。
服は、数千円じゃなきゃおかしい、という感覚。
ジョンスメのカーディガンの十倍以上の趣味費用(写真1作品の制作費)を、投入していた亡き父よ、母にそのあたりの基準価格の意識を、もう少しどうにかしといてくれればよかったのに。と、いまいくら訴えても、しょうがないけど。
価格は数千円か?そして、その価格は、定価より安くなっているのか?が、母の服に対するゆらがない基準みたい・・・。
ジョンスメはね、洗濯機でネット洗いできるからクリーニング代いらないし!洗ってもヘタらないし、色もあせないし!
シンプルでエターナルなデザインだから、もしかして十年使えるかもしれないし!だからその価格、安くないと思う!
早く着れば着るほど、何回も着れば着るほど、減価償却されていく!だから長袖が着られないほど暑くなる前に着てよ!
・・・・と、ワタシがいくら主張してもダメなんだろうな。
交通費・宿泊費含めた一泊旅行代金だって、ジョンスメカーディガン並みにかかるはずなのに、そちらについては母の基準価格に沿っているみたい。
でもねー、人の意識を変えることはできないんだよね・・・。
ただ、この場合、買うか買わないか、じゃなくて、そこにもうモノはあるのに、それを使うことができないということだから。
人にはそれぞれ、自分に贅沢を与えることが許せない分野があって、母にとってはその分野が「服」なんだよね。
で、その分野、他者の力で変えることは、できないんだ。
まだ「着た」という連絡がこないから、このまま袖が通されない可能性も高い。
人に着られることを待っているカーディガンに、とても申しわけないきぶん・・・。