お買い物同行

新宿高島屋
夏のバーゲンの最終期に到達し、秋物も混じり始めた9月。
私のイメージコンサルティング診断をしてくれた先生との、お買い物同行が始まった。
先生は私と落ち合う前に、あらかた下見をしておいてくれたようす。
雑貨売り場では、おすすめのシルクのネッカチーフを教えてくれた。
グレースタイプは、小物は最小限抑えたほうがよく、ストール、ショール、マフラーなどの巻物は、避けたほうがいいアイテム。
小さめのシルクのスカーフ程度でいいそうだ。
冬に防寒の役割でどうしてもストールを巻きたくなったら、ボリュームのでない素材を選ぶこと。
目立つ帽子も不可。(できれば、かぶらないほうがいい)
目立つ靴も不可。
靴は装飾があったり、派手なデザインのものを避け、ラウンドトゥよりポインテッドトゥがよい。
アクセサリーも、大きいものはだめ、小さめのもの。
つまり、私って、今後は雑貨小物売り場にほぼ出入りしなくても、済むのかもしれない。
飾り物が似合わないタイプのように思える。
それはそれですっきりするし、楽だわ、とほくそえむ。

服のコーナーでは、似合うアイテムの基本として、テーラードジャケットと、センタープレスの入った細身のストレートのパンツを試着。
じつはどちらのアイテムも、私は持っていない。
テーラードもパンツも似合わないと思い込んでいて、ノーカラージャケットとスカートというパターンだった。
でも。
試着してみたら、あれ、似合う…ような気がする。
先生と店員は、立ち場上、絶賛。
ひきつづき、先生はシャツワンピースを選んでくれる。
身体が入らない状態で見ると、ものすごくシンプルなデザイン。
比翼仕立てのため、ボタンさえも隠されている。
私は、シャツワンピースも、自分に似合わないアイテムだと思っていたので、持っていないし、ほぼ着た事がない。
でも。
あれ、似合う…気がする。
ワンピースのデザインの中で、一番(唯一)似合うのがシャツワンピースだったのか、と思うくらい。
これからは、ワンピースは、シャツワンピースを選ぶようにしよう、と、とたんに決心。
選択範囲が狭くなっていくのは、「おしゃれの運用」がしやすくなって、いい。
先生によると、テーラードといっても、丈の長さ、襟の大きさ、かたち、シルエットにより、だめなものもあるそうだ。
たとえば、タックでくびれが入りすぎたシルエットのテーラードジャケットは、だめ。
ダブルはだめ、シングルを選ぶ。
ジャケットやトップスのすそが広がったシルエットはだめ。
つまり、この年流行していた、ポンチョ型、マント型は、グレースタイプには、とんでもないアイテム。
売り場をまわって、「あれはだめ」「こういうのはいい」「これは、この部分がじゃま」と、精力的に、どんどん指導をしてくれる先生。
「面白い」服は、他の似合うタイプの人にまかせて、私は着ないようにとのこと。
ジーンズを着る場合は、ダメージやロールアップは避け、上は、襟のあるシャツを合わせて、きれい目に着ればよし、などなど…。
時間がきてしまったので、この日、バッグだけは実物を前にした指導がなかった。
バッグについて、ひとつだけもらった指導。
「グレースタイプに最も似合うバッグは、ケリーバッグ。しかし本物を手に入れずとも(ムリだし)「もどき」のデザインでよい」というもの。
この指導、後に、まるで私に課された「バッグのルール探し」の宿題のごとくになっていくのだが。

帰宅後、先生の指導の言葉を思い出して、メモをつくっていく。
似合うアイテム、避けるアイテムを思い出して、書いていく。
すると。
「要素」が見えてきた。
「ルール」と言ってもいい。
いいもの、ダメなもの。それぞれに共通した要素が、ある。
たぶん、複数のルールがある。
この日に気がついたルールは、これ。
いかにして、縦の直線をつくるか。
そして、縦の直線を妨げる、あらゆる要素を排するか。
私が指導された、避ける要素には、フリル、ドレープ、ギャザー、大きな襟、目立つ装飾(ポケットさえも)、小物、大きな柄や不規則な柄、ボーダー、チェックもあった。
これはすべて、縦の直線を妨げる要素である。
見る人の視線が、縦にスキャンするのを邪魔する。
ダブルのジャケットも、ボタンが2列に並ぶことになるから、一本の縦の線をくずす。
ポンチョもマントも、同様に、崩すアイテムだ。
ストールやマフラーなどの「巻きもの」も、帽子も、そうなのだ。

対して、センタープレス、小さくて規則的な柄、ストライプ柄、プリーツはOKな要素。
縦の線を邪魔せず、縦の強調の作用もする要素だ。
靴のつま先のかたちが、ポインテッドトゥが良しなのも、おお、縦の矢印をつくるからではないか。
対して、ラウンドトゥは横の矢印をつくるのだ。
たとえば、グレースタイプが似合うとされるシャツでも、シャツならなんでもいいわけではなくて、美しくて立体的なフリル飾りが特徴の、かつ身体にコンシャスな「ナラ・カミーチェ」のシャツは、私には似合わない。
身体にコンシャスということは、すなわち、縦の直線ではない。
横に向かおうとする、曲線だ。
たぶんナラ・カミーチェのシャツは、ファッショナブルタイプか、ロマンスタイプが似合うのではないかって気がする。
さらに、気がつく。
私のクロゼットの中は、過去も現在も、「縦」ではなく、「横」よりのアイテムだらけだった。
水玉模様でもストライプでも、正円ではなくドットのようなゆがんだ水玉、フリーハンドで書いたようなストライプ、と、まるで逆方向へ進んでいたのである。
私は、横ではなく縦に進まなければ! と、気がついたのであった。