胸元の問題

安藤優子
日本人の「グレースタイプ」の代表例である。
イメージコンサルタント界の(そういう世界があるかどうかわからないが)、ある流派で、総意により認められた人らしい。(たぶん)
有名人で、この人は何タイプか、については、全国のコンサルタントたちによって、日々、探索されているようだ。
ちなみに、マツコ・デラックスもグレースタイプ、という説がある。
また、皇族では、雅子妃はファッショナブルタイプ、紀子妃は、フェミニンタイプ、という説もあるらしい。
たとえば、エルメスのスカーフに、テーラードジャケット、という服装が、より似合うのはどちらのお方か、と考えたら、この違いがわかりやすいかもしれない。
しかし、皇族というお立場ゆえ、必ずしも各タイプ直球のデザインの服装をするわけにもいかないらしい。
では、海外の有名人の、グレースタイプって?
探索中の意見を集めてみたところ、グレースタイプ「ではないか」とされる海外有名人は、こんな感じ。
オードリー・ヘプバーングレース・ケリー。二コール・キッドマン。
このような世紀の美女たちを、私ごときが参考にしようと考えること自体、間違っているのかもしれない。
だが、この方たちの服装の写真からは、ものすご〜く教わることが多くて、うちひとりについては、この人って天才なんじゃないか?と感動した。
その話は、また後日。
実は、私をグレースタイプと診断してくれたコンサルタントの先生には、いったん顧客になれば、何度でも無料のメール質問ができる。
だが、コンサルティングの知識と情報は、コンサルタントにとっては、商売道具、商品の命のようなもの。
メールの質問の返答は、必要にして、最低限の情報にとどめていることが、文面から伺えた。
まあ、これは仕方がない。コンサルタントにしてみれば、いったん顧客としてつながりを持ち、その後の、季節ごとの単発のお買い物同行料や、結婚式や発表会などのイベントに関わる衣装やメイク指導の、コンサルティングによる、収入を見込んでいるはずなのだ。
でも、できればコンサルタントに丸投げするのではなく、別途、自分でも、試行錯誤していきたい。
その試行錯誤、つらいわけではなく、むしろ、楽しいからだ。
悲おしゃれ女子にして、ファッション自体にも、ほぼ興味がなかった自分に、まさかこんな変化が訪れようとは、思いもしなかった。
さて、グレースタイプが似合う服装について、素人なりに探索していく。
それは、新たなルールを発見していく旅に、等しい。
まず、新発見のひとつ。
胸元である。
胸元を隠すか、見せるか、というポイントである。
グレースタイプは、胸元を隠した(胸元の空きが小さい)ほうが、似合うと思う。
なんせ、着物が一番似合うのはグレースタイプ、とされているくらいだから。
(胸元の空きが極度に小さいうえに、髪型は小さくまとめるかストレートで、「縦の直線」に限りなく近いシルエットをつくるのが着物だ)
もちろん、胸元を見せる(開きをつくる)ほうが似合う、隠すとかえって違和感がある、というタイプも、ある。
イメージコンサルティングは、女性に限ったものではなく、男性に対しても行われ、類似したタイプ分けが設定されている。
私が「胸元を隠す」というポイントに気がついたのは、男性のグレースタイプを考えてみたときである。
コンサルタントの先生に聞いたことだけれど、ジャニーズ事務所は、非常にうまく、タイプの違う者どうしで、グループを構成して売り出しているのが面白いんだそうだ。
たとえばSMAPは、5人全員が同じファッションタイプ、ではなく、複数のタイプで構成されている。
木村拓也はロマンスタイプ、中居正弘はハイスタイルタイプ(女性のキュートタイプの男性版)、香取慎吾ナチュラルタイプなんだそうだ。
この三人、例えばシャツのボタンを全部きっちりとめて、ネクタイで締めるほうが似合うか?
逆だと思う。ノーネクタイでシャツの襟を開けるとか、ストールを巻いて、胸元にドレープをつくるとか、襟つきシャツよりTシャツのほうが映えるとか、胸元を開けたり、胸元を乱すほうが似合うと思う。
(中居正弘は、蝶ネクタイとかカラーシャツとか、遊び心いっぱいな方法なら、「ボタン全部閉じ」も、着こなせるけれども。でもこれは「胸元を乱す」という着方のひとつにあたると思う)
対して、稲垣吾郎草なぎ剛は、胸元を隠したほうが、似合うと思う。
Tシャツより、襟のついたシャツ、ニットなら、素肌にVネックより、下に襟つきシャツを着るか、タートル気味のニットのほうが似合うと思う。
胸元、隠すことになるでしょ?
このふたりは、どのタイプか特定できないんだけれど、もしかしたら男性のグレースタイプなのかもしれない。
芸能人は、華があって個性的だから、どんな服装でも魅力的に見せられる人たちでもあって、難しい。
しかし、私の素人判断ながら、絶対これは男性のグレースタイプだ!と勝手に決めている芸能人が2人いる。
向井理と、嵐の二宮和也である。
このふたり、絶対に、襟付きシャツを「ボタン全部閉じ」で着たほうが似合う。
去年、表参道駅構内で見かけた、二宮和也のパジャマ姿の等身大の(家電系の宣伝ポスターだったか?)4、5枚組のポスターでも、彼が着ているパジャマはちゃんと「襟つき」だったのだ。
さすがにパジャマだったから、「ボタン全部閉じ」ではなかったような気がするが。
向井理のユーキャンのCMも、二宮和也のJCBのCM(買い物カートが後ろからついてくるバージョン)も、襟付きシャツ+ボタン全部閉じ+ネクタイだったはず。
胸元を隠したほうが、似合う人たちなのだ。すごくグレースっぽい。
「胸元を隠す」か、「胸元を見せる」か。
このふたつのうち、自分がどちらが似合うかを発見するだけで、すごく大きなルールを発見したことになる。
服のデザインが一気に、絞られる。
ちなみに、二宮和也以外の嵐のメンバーがどのタイプかは、素人判断できていないけど、SMAPと同じく、嵐も、ちがうファッションタイプのメンバーの組み合わせなんだろうなあ。
昔々は、ひとつのアイドルグループ内全員が、同じデザインのコスチュームを着せられていた時代があったと思う。
今は、全体に共通したテイストだけ持たせて、それぞれ、デザインの細部や着こなしを、変えていたりするしね。
(紅白だと、それがよくわかる。なんてったって晴れの衣装だし)
グループ全員が写っているポスターやスチール、雑誌の写真を見かけたら、胸元を隠しているのが誰で、開けて(乱して)いるのが誰か、という点に着目するだけでも、面白いのである。
というわけで、自分にも、以後、胸元を隠す服を、とりいれていくことにする。
実は、胸元以外にも、守るべきルールがあったのだが…。