ケリーバッグの実用性

グレースタイプに最も似合うのは、ケリーバッグ
もちろん、ケリーバッグっぽいデザインの、「もどき」のバッグでいい。
イメージコンサルティングで、バッグについては、それだけ指導を受けた。
まず考えた。
ケリーバッグの特徴って、何だろう?
エルメス店舗に入っていく勇気はゼロだったので、ウェブや紙媒体の写真や、見ているだけの客を店員が放っておいてくれる、ブランドバッグのディスカウント系のショップで、ガラスケースの中に鎮座しているケリーバッグを、まじまじ見てみた。
観察した結果、見つけ出した特徴はこんな感じ。
ワンハンドル。
台形。
床に立つこと。
ギャザーや、余分な飾りはなし。
それに、ケリーバッグの「顔立ち」そのもの。
世の女性用のバッグって、デザインが「顔」っぽくないだろうか?
金具部分や外ポケットが目で、留め口やジッパーが口、みたいな。
「顔」をイメージして、さまざまなバッグを見ていると、キュートな顔、とぼけた顔、おどけた顔、どや顔などある。
その中で、ケリーバッグの顔は「美人」だ。
つんととりすました、高貴な美人顔。
グレース・ケリーに選ばれるだけあるなあ。
たぶん、数多くの顔(バッグ)の中から、自分の顔を選んでいたに、等しいね。
エルメスバッグで、ケリーと並ぶ二代巨頭、バーキンバッグ。
同じく、美人顔なんだけど、ケリーよりも、ほんの少し野性味が加わった、気さくな、大型美女という感じ。
ジェーン・バーキンは、エルメスに、自分の顔をデザインしてもらったようなものじゃないだろうか。
バーキンは、バッグのふたが開けたままでも、持ち歩けるようになっていて、大型にしても映えるデザインだから、かなり大型のサイズまで、作られている。
ケリーは、バッグのふたをきっちり留めた形が、その美しさの完成形。
いつもきちんとしていないといけない、美人のよう。
加えて、ケリーは、ある程度の大きさにとどめないと、その美しさを損なうと思う。
そういえば、コンサルティングでもらった簡単な紙資料では、「バッグの大きさは中型」とあった。
グレースタイプは、できるだけ巨大なバッグは持たないほうが、いいらしい。
しかし。
ケリーバッグって、使いにくいんじゃないか?
バッグを持ったときの、動作や所作を想像すると、バッグの内部に素早く手を入れて、目的のものを取り出せるか、それも立ったままで、という条件が必要になってくる。
ケリーは、この条件からすごく遠い。
ケリーバッグでも、ふたをゆるめたまま持ち歩く、セレブの画像も多々見かけた。(ビクトリア・ベッカムとか)
そう、せめてふたを閉じないようにしておかないと、不便でしょうがないのだ。
だって、ケリーには、外ポケットも、いっさいないのである。
まあ、究極の美を追求したら、ケリーバッグに外ポケットなんて醜い、というのがエルメスの美学なのかも。
私が身を置く、リアルな世界で、ケリーバッグを持つ人を見た経験は少ない。
地下鉄の改札口を入った、ホームの手前の柱の前で、ケリーバッグを下げて、背筋をしゃん、と伸ばして立っている、推定五十代の女性を見かけたことがある。
見た瞬間、かすかな違和感を覚えた。
たぶん、持ったら「しゃん」とせずにはいられない力が、ケリーバッグには、あるのだろう。
でも「しゃん」としている場所が、似合わない、そぐわないのだ。
ケリーバッグを持った人は、地下鉄に乗らないような気がする。
前記事「白のジャケット」で書いたのと同じ、どこに移動するにも運転手つきの車で、という人じゃないと、無理な気がする。
バッグの中の物を取り出すときは、立ったままなんて乱暴なことはありえず、車内や室内で、座って、ゆっくりと優雅にケリーのふたを開けるのだ。
美しさと実用性。
美と実。
似ている字なのに、相反している意味。
それとも、似ているということは、本当は、美と実は近いところにあるのか。
とにかくケリーは、思い切り「美」寄りである。
ケリーよりも、ちょっと「実」に寄ってくれているバーキンは、持ち歩くにはその重さに耐えられず、手放す、という一般女性の意見が多々。
やっぱり移動時間の大部分が車など、「自分が」バーキンを持って歩く時間が極力少ない人じゃないと、無理ってことかも。
すったもんだ(頭の中でだけど)の末、私が、ケリーバッグっぽいバッグとして購入したのは、マックスマーラのマルゴーの、ワンハンドル型のブラックである。
マルゴーのダブルハンドルだと、A4サイズOKな大きめサイズだが、ワンハンドル型だと、それよりサイズが小さくなる。
顔も、ちょっとケリーに似ている。
ケリーとちがって、バッグのふたは皮ベルトではなく、ジッパーなので、ちょっと歯をくいしばって、がんばっている顔という印象もあり。
それでいいのだ、私は労働者だし、優雅になれない、がんばって生きていかなくてはならない身なのだから。
とはいえ、マルゴーのワンハンドルは、「実」よりもやや「美」寄り。
なので、使いやすさ満点とはいえない。
でも「美」寄りのバッグ、必要なんだよね。心の栄養として。だから私にとって、そういうバッグとして、購入した。
「労働者」のバッグとして、もっと「実」寄りのバッグは、別にあった。
それはまた後日。