袖の問題

今週のお題「2012年、夏の思い出」
半袖の着方が、変わった。
きっかけは、オードリー・ヘップバーンだった。
いや、その前にまず、イメージコンサルティングで、ニットについて質問メールを送ったときの返答から始まる。
去年の秋、グレースタイプのニットは、どんなものを選べばいいか、とメールで質問してみた。
以下、返答で得た、ポイント。
素材は、ローゲージではなくハイゲージ。
つまり、アランセーターみたいな、ざっくりニットはだめで、カシミヤやメリノウールなどの、細かくて平坦な網目のもの。
形は、腕の形と、身頃の形に、沿っていること。
つまり、オフタートルとか、ゆるニットとか、ドルマンスリーブとか、ベルスリーブはだめ。
かといって、身体にタイトなニットでもだめ。
つかず、はなれず。
これが、ニットに限らず、グレースタイプのすべてのデザインの特徴のひとつらしい。
「つかず、はなれず」を条件にしたとたん、素材まで絞られてくる。
たとえ、この冬の流行は、ローゲージでざっくりニット!とうたわれても、我、関せず、の状態でいられる。
今年の夏を迎えようかというとき、ふと、半袖について、考えた。
もしかして半袖って、「腕の形に沿わないもの」の代表じゃないか?
まず、腕を分断して見せてしまう。これは間違いない。
ここまでが私の腕の長さです、と主張したいところ、半袖の末端で、一度視線が止まることになる。
アームホールが広い半袖だと、袖の裾も広くなるから、分断感覚がいっそう強まる。
肩口から、指先まで、一気に、視線をスキャンさせるには、長袖か、ノースリーブだ。
あるいは、それにできるだけ近い形にすること。
いくらなんでも、夏に半袖と関わらないわけにはいかない。
すると、オードリー・ヘップバーンが「ローマの休日」で、シャツをどんなふうに着ていたか、に思い当たる。
オードリーは、グレースタイプではないかとされている女優。
永遠のファッションアイコンなので、写真集が数多い。
美しい人は、基本、何を着ても似合うが、それでも、どっちかというと、こういうタイプの服はオードリーに似合わないなあ、と感じさせる服が見えてくる。
オードリーは、「ローマの休日」で、シャツの袖をロールアップして、腕の上部に沿わせている。
そうすると、ただ半袖を着るよりも、腕の形から逸脱せずに済む。
さすがに、王女の役だから、ノースリーブには、できなかったのだろう。
長袖じゃ、ローマの温度感と、王女の開放感と、つかのまの自由の風の感覚、が出せなかっただろうし。
(ちなみに、ソフトバンクのCMで「ローマの休日」風に扮した、上戸彩は、たしか、しっかり半袖をのばした状態で、シャツを着ていたような気がする。上戸彩の場合は、もしかして、この半袖の着方のほうが、似合う女優なのかもしれない。)
麗しのサブリナ」での、ショートパンツ姿も、たしかパンツの丈は、足の付け根ぎりぎりまでの短さだったが、理屈は腕と同じ。
そうすることで、足の付け根から足先まで、足を一気にスキャンして見させることができるからだ。
オードリー・ヘップバーンと、衣装担当のイディス・ヘッドに対する私の発見と賛嘆は、それからも継続することになるのだが。
とりあえず、この夏、私は半袖のコットンシャツを、すべてロールアップして着たのであった。わはは。